夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(4月24日掲載)

「相手に使わせぬための『核議論』を」
「補正予算案は国民の安全・安心に配慮」
 私は先日、地元・北海道で「核の議論をすべきだ」と訴えた。2年半前にも同様の提案をしたが、この真意について説明したい。
 北朝鮮は5日、日本列島を飛び越えて長距離弾道ミサイルを発射した。それまで、マスコミは大騒ぎしていたが、日本に被害がないとパッタリと報道しなくなった。これではいけない。

 すでに北は日本全土を射程に入れる中距離弾道ミサイル「ノドン」を200基以上も配備しており、米国防情報局は先月、北が核爆弾の小型化技術の獲得に成功した可能性があるとの見解を示している。
 日本の制裁措置に対し、北は「宣戦布告とみなす」とか「東京を火の海にする」と公言する異常な国家である。脅威は確実に高まっている。平時の今こそ、核の脅威にどう対抗するかを議論すべきなのだ。
 オバマ米大統領は北のミサイル発射直後、チェコの首都プラハで「核兵器のない世界を目指す」と演説した。私もまったく賛成だが、日本の周囲には、北をはじめ、いくつかの核保有国が存在する。安全保障上、こうした現実を無視することはできない。何も議論しなければ、ますます直接脅威は増大する。
 私は決して「核武装しろ」と言っているわけではない。ただ、歴史的に見ても、国際社会の平和と安全が軍事力を含めた「力の均衡」によって維持されてきたのは冷厳な事実である。銃器や火薬、戦車、航空機など、強い武器を持った国が、外交交渉を優位に進めてきたのも事実だ。
 日本と同じ、第2次世界大戦の敗戦国であるドイツやイタリアはNATO加盟国として、米国の核発射ボタンを共有している。これが抑止力だ。相手に核を使わせないために、非核3原則のあり方を含め、核シェルターや放射線対策など、目をそらさずに議論すべきことは山ほどある。
 さて、新たな経済対策の裏付けとなる2009度補正予算案が来週27日に国会に提出される。私が財務相時代から考えていたもので、総額は13兆9300億円。エコカーと省エネ家電の購入補助制度ばかり注目されているが、医療や福祉、学校の耐震化など、国民の安全や安心、経済回復に配慮したきめ細かい予算案となっている。
 野党やマスコミは「総選挙対策」「国債発行額が多い」などと批判しているが、景気が底抜けすれば、さらに惨憺たる状況になりかねない。麻生太郎首相は選挙よりも、「いかに日本経済を回復させるか」を考えている。1日も早く成立させて経済対策を進めたい。