【講演】「シンガポールと水と日本 Vol.3〈終〉」(2009年5月)

2009年5月 昭成会・講演
シンガポールと水と日本 Vol.2」の続き

◆ASEANと中国

タイでは、タクシンが貧しい人にヘリコプターマネー、いわゆる“ばらまき政策”とも呼ばれるやつですが、お金を配っていました。ただ、どうもそのお金もだんだんなくなってきちゃったという状況のようです。
「タイ人は怒ると怖い」と言う話を聞いたことがあるのですが、政治もかなり激しい戦いをするようです。シリキット王妃も非常に国民的人気の高い方のようですが、なんせ、70年で60回以上もクーデターがあるという国です。
最後は軍部と王様が「いい加減にしろ」と言えば収まるのですが、最近はどうもその威厳が衰えてきたように思えます。

やはりASEANはインドネシアとタイ、それからベトナムの3か国が、非常に大きな影響力を持っている。
そして、そのいずれの国も中国に対する警戒感を持っている。
日本もASEANと同じように、中国に対して「おさえ」のポジションにあると考えていますが、ご承知の通りインドネシアは大統領選挙でガタガタやってますし、インドも選挙直後ということで、より一層、日本の「おさえ」が重要になっている、と考えています。

◆ロシア、そして、イラン

アジアがこういう状況の中、先日、プーチン首相が、国賓ではなくて公賓で来られました。プーチンはやはりしたたかで、「領土問題はメドベージェフに全部任せてるから」ということで一切語らず、自分は高速鉄道、エネルギー、木材や車の関税率など経済問題だけを言うだけ言って、帰って行きました。
ただこの領土問題は、我々にとっては看過することができない問題ですから、メドベージェフに全部任せているというのなら、そこをしっかり攻める必要がある、と考えています。
ロシアも、ヨーロッパやアメリカとの関係が私の目から見るといまいちパッとしないように思えるのですが、対中国は非常に意識しているな、と感じています。
なお、話が変わりますが、中国と同じように今、世界の国から注目されているのはイランじゃないかとも思っています。つまりイランの核兵器をイスラエルがどうするか、ヨーロッパもアメリカもロシアも非常に注目をしているということのようです。

ついでに言うと、誰は言いませんが、最近、アメリカの要人にユダヤ系が増えてきたようです。そういう意味ではアメリカはこれからユダヤの色彩が強くなっていくようにも思えます。

◆中国のパワー

世界がこういう状況の中、中国は着々と前へ進んでいるように思えます。あの国はいろいろな意味ですごい。
特に経済復興は相当なスピード感とエネルギーとパワーがある。
我々も経済対策では、「世界で最もスピード感がある」と思っていたのですが、例の4兆元、日本円にしておよそ57兆円の緊急経済刺激策などをみても、中国のやり方は相当なエネルギーを感じます。
ヨーロッパは財政赤字規律がありますから、なんでもかんでも財政出動ができない。
アメリカは、本来は「なんでもあり」をやりたいはずなんですけれども、あの国は、議会、あるいは個々の議員と個別予算の関係が非常に属人的ですから、大きな予算を上げての経済対策を出すのは時間がかかる、と言われています。7800億ドルの経済対策もこの間、通りましたけれども、実際にあの効果が出てくるのは夏以降ではないか、という予想もあります。

◆そして、日本

日本はいつも「遅い、遅い」と言われますが、一次補正、二次補正、年度予算、そしてまた補正と、中国ほどじゃないですが、他国に比べて次から次へとどんどん対策を出しやすい。そのうち、地域によっては、「もうお腹いっぱい」と言うところも出てきてしまうのですが。それをうまく使うことが、景気回復のための手段であることは間違いないんです。中国をほめたいわけではありませんが、あの国なんかに負けないスピード感で必要な政策を実行しなければならない、と考えています。

以上、いろいろとお話してきましたが、新型インフルエンザの問題もありますし、進行中の景気対策の問題もあります。体の安全・安心、お金の安全・安心、心の安全・安心を確保することが政治に与えられている現代の最重要課題だと思っておりますので、今後もその努力をしていきたいと思っています。

最後はすっかりシンガポールも水も関係ない話になってしまいましたが…。本日はありがとうございました。

(終わり)