日本農業新聞 「ざっくばらん 農相回顧 中川昭一」(3月28日掲載)


(7)農政改革/巡り合わせに意欲
《戦後農政の大転換となる農政改革関連法を2006年の通常国会に提出し、6月に成立させた。担い手対象の「品目横断的経営安定対策」、農村資源を守る「農地・水・環境保全向上対策」など、新施策の07年度導入が本決まりとなった》
 最初の農相の時に「食料・農業・農村基本法」を成立させた。1999年だった。これで農政が新しい世界に入った。新基本法で、生産者だけではなく、消費者も国も自治体もみんなで食料の安定供給ができる国づくりをしようと定めたんだ。
 この新基本法をベースに農水省はいろいろな対策をとってきたが、私がまた農相のバトンタッチを受けた。本当に巡り合わせだね。今度は、農家経営の支援措置などを抜本的に変え、やる気と能力のある担い手を育て、もうかるための後押しをしようと。自民党と4130億円の具体的な対策予算も決めた。非常にやりがいがあった。
 担い手の1つの形態の集落営農には正直言って、私は北海道が地元だから余り意識がなかった。ただ、北海道以外の地域では、集落の単位が非常に重要だとの認識はよく分かる。
 《農政改革関連法案の国会審議は熱を帯びた。民主党が担い手限定の経営安定対策を「小農切り捨て」と批判し、全販売農家対象の対案を出して政府・与党と対立した》
 国会では民主党提出の法案も審議し、健全というか良かったと思う。当然、私は政府案が良いと思って答弁をし続けた。
 農産物を作りさえすればいい時代は終わった。良い物は消費者から選ばれる。同じ条件なら絶対、国産で顔の見える農産物の方を消費者は選ぶというのが私の信念だ。
 だから、農業は消費者に買ってもらえる物を作ることが前提で、それは輸出にもつながっていく。将来展望をきちんと持てばできるわけだから、経営感覚がある担い手づくりがすごく大切になる。そうすれば、消費者も喜んでくれる。
 民主党代表になった小沢一郎さんは、農産物の輸入を完全自由化し、でも食料自給率を100%にすると言い出した。これは生産者も消費者も愚弄(ぐろう)した話だと思う。だいたい、そんなことはできっこないというのは、消費者でも分かるよ。