夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(6月15日掲載)


「国民の大切な年金は守り抜く」
「不安を完全に解消することを約束」
「年金問題を『政争の具』にするな」
 いわゆる「宙に浮いた年金」問題では、国民の方々に大変なご心配、ご迷惑をおかけしている。いい加減な年金情報の管理をしていた社会保険庁に対し、激しい怒りを感じている方も多いだろう。役所を監督すべき政府与党の一員として心からおわびを申し上げたい。
 私自身、かつて不覚にも国民年金が未納となっており、厳しい批判をいただいた。現役世代が払う保険料をその時の受給者の給付金に充てる「賦課方式」の原則からいうと、私は義務を果たさなかったことになる。いまでも猛省している。
 ただ、一度たりとも社保庁から催促状は来なかった。本人からの「申請主義」を原則としているためらしいが、今回、同庁のあまりにひどい対応を目の当たりにして、私も怒りが沸々とわいてきている。
 今週、こんな出来事があった。
 年金問題に早急に対処するため、社保庁幹部を呼び、「基礎年金番号は信用できるのか?」と確認したところ、幹部は「絶対に大丈夫です」と答えた。ところが、同じ時間帯の国会で、基礎年金番号の重複が2万件以上もあることが発覚したのだ。
 もはや、社保庁という組織は信用ぁw)€ノ値しない。人の大切なお金を預かっている民間の銀行や保険会社ならば、即業務停止で倒産するだけでなく、損害賠償請求訴訟をはじめ、歴代経営者の刑事事件にまで発展していただろう。過去に例もある。
 政府自民党はまず、年金支給漏れをなくすため、会計法上の大原則である5年間の消滅時効を撤廃する特例法案を提出した(参院で審議中)。来年の5月までに、統合ができていない年金記録約5000万件と統合済みの記録との全件照合を修了させる。
 さらに、安倍晋三首相の決断で、年金記録記載漏れの原因と責任の所在を調べる検証委員会を、社保庁を所管する厚生労働省ではなく総務省に設置した。
 政府与党の責任として、国民の方々の大切な年金は必ず守り抜く。加えて、社保庁の歴代幹部らには明確な責任を取らせる。法律違反があれば、幹部から末端職員までその責めを負わせることを約束する。
 前出したように、われわれ与党が社保庁に情報開示を指示すると、何とか隠そうとする傾向がみられる。一方で、職員組合(自治労)が関係の深い野党に情報を流して、政治的攻撃を仕掛けている疑いが濃い。
 こぁw)€フ背景に、安倍内閣が「戦後レジームからの脱却」を掲げ、公務員制度改革や視uミ保庁改革などを断固として進めていることに、「親方日の丸」体質に浸り切った一部の職員らが抵抗しているようだ。約20年前、国鉄民営化に激しく抵抗した国鉄労組と同じ構図であり、許し難い蛮行といえる。教育再生も公務員制度改革もこの点は共通する。
 国民の老後を支える年金を「政争の具」にしてはならない。これは国家の非常事態だ。与党、野党関係なく、国民のためにやるべき仕事をやろうではないか。われわれも譲る部分は譲ろう。一刻も早く、国民の不安を完全に解消することを誓う。