夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(6月1日掲載)


松岡利勝前農水相がお亡くなりになられた。松岡先生は昨年9月、私の後任の農水相に就任された。事務引き継ぎ式で、私は「引き継ぎ事項はただ1つ。農業行政に詳しい松岡先生ですから、すべてお任せします」と話したことを覚えている。
 日本産米の中国輸出で正式合意し、農林水産物や食品の輸出拡大に尽力された。環境問題と農林業振興を組み合わせるなど、松岡先生でなければできない仕事も多かった。本当に残念だ。ご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の方々には心よりお悔やみを申し上げたい。
 さて最近、私は明治大学や東京大学、九州大学で講演する機会に恵まれた。エネルギーから、バイオ、水の問題など、幅広く話すことができた。
 日本は世界第2位の経済大国でありながら、固有のエネルギーや資源はほとんどなく、大部分を外国からの輸入に頼っている。
 「産業のビタミン」と呼ばれ、家庭用品から、携帯電話や液晶テレビ、ハイブリッドカーといったハイテク製品に至るまで幅広く用いられるレアメタルも同様。産出国は中国や南アフリカなど、世界の限られた地域に偏在しており、日本にとっては非常にリスクが高い状況になっている。
 日本は水だけは豊富というイメージがあるが、人口1人当たりの降水量は世界平均の4分の1。アメリカの5分の1、サウジアラビアの4分の1しかない。ダムの貯水量を1人当たりに換算しても、日本は32立方メートルで、アメリカの17分の1、韓国の16分の1だという。
 今年は暖冬だったので水不足が心配されているが、地球全体でも水不足や水質汚染は深刻化している。国連は「21世紀半ばには、全世界で22億人が水不足に直面する」との報告書を出しており、決して、安穏としていられる状況ではないのだ。
 私がこうした話をすると、学生諸君は私語もなく真剣にノートを取っており、質疑応答では的確で手ごわい質問が返ってきた。講堂は非常に熱気があり、講演後も「大学の授業は現実的ではないと思っていたが、中川先生の話を聞いて授業が面白くなった」というメールも頂いた。
 新聞やテレビでは、ごく一部の退廃的な若者によるひどいニュースが目立つが、志を持って学び、社会に貢献しようという若者は多い。日本はまだまだ捨てたものじゃない。私の方が「彼らにバトンタッチするまで、もっと頑張らなければ」と触発された。
 これからも、日本の未来を信じて前進しようという人々の元に出かけていき、真剣勝負の議論を重ねていきたいと思う。