夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(10月19日掲載)


「亀田家をあおった周囲の責任」
「首相は北朝鮮、中国に毅然とした態度を」
 先週行われたWBC世界フライ級タイトルマッチはひどかった。亀田大毅選手の悪質な反則行為はもとより、それを挑発するような父でトレーナーの史郎氏や兄の興毅選手の暴言は理解を超えていた。
 私もテニスをやるが、ルールを守ることはスポーツの基本中の基本。特に、ボクシングは生命を落とす危険性もある激しい格闘技だけに、より高いフェアプレーの精神が求められるのは当然のことだ。
 亀田親子の反則や暴言は絶対に許されないものだが、彼らを持ち上げてヒーロー扱いしてきたTBSなどの一部マスコミや、暴走を止められなかったボクシング界の責任も大きい。
 視聴率競争や営業活動に利用するため、常軌を逸した彼らの言動を煽ってきたから、ここまで増長したのではないか。テレビで取り上げられる彼らの言動は子供たちも見ている。
 さて、3日に平壌で行われた南北首脳会談で、北朝鮮の金正日総書記は「日本人拉致被害者はもういない」と語ったという。あの国のいつものやり方ではあるが、白々しく、かつ許し難いものだ。
 少なくとも数十人という日本人が、ある日突然、北に拉致されて、いまも帰国できずに暮らしている。何の罪もない人々の大切な人生や家族を奪ったのだ。これは北による国家的犯罪であり、卑劣極まるテロ行為である。
 先日、「日本政府は、北が拉致被害者の再調査に応じれば、人道支援に踏み切ることを検討している」との報道があったが、とんでもない話だ。まず先に、最大の人権問題である拉致問題を解決すべきではないか。
 東シナのガス田問題も取り上げたい。先月末、私は上空から現地を視察し、中国のガス油田「樫」で、生産続行を意味するフレア(炎)を確認してきた。日本が主権的権利を持つ海底資源がストローのように中国側に吸い上げられている可能性が高いのだ。
 私は経産相時代、わが国の権益を守るため日本側の排他的経済水域(EEZ)内の海底試掘権を帝国石油に付与したが、その後、政府の協力が得られず、試掘準備は事実上ストップしている。
 拉致問題もガス田問題そうだが、国家として毅然とした姿勢を見せない限り、他国は「日本は何もできない」と甘く見て、次から次へと日本の権益を侵してくる。これは蟻の一穴かもしれない。事なかれ主義では、国民の生命も財産も守れないのだ。
 そして、国民がいつの間にか、これらの問題を忘れてしまえば、誰が喜ぶのか、よく考えるべきである。
 どうか福田康夫首相には、北や中国と激しい交渉をしてでも、すべての拉致被害者を取り戻すとともに、自国の海底資源を断固守り抜くという強い決意を示していただきたい。