夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(12月21日掲載)


「激動の2007年を振り返る」
「キーワードは『賞味期限』『下がる?』『本物』」
 年内最後のコラムなので、激動の2007年を振り返ってみたい。私にとって、この1年を象徴するキーワードは「賞味期限」「下がる?」「本物」の3つだ。
 まず、「賞味期限」だが、今年は連日のように食品会社や菓子製造会社による、賞味期限の改ざん、産地や原材料の偽装・偽造が報じられた。国民の「食の安全」にかかわるだけに厳正に対応すべきだが、政治の賞味期限についても考えさせられた。
 自民党は統一地方選と参院選で民主党に敗れた。年金対策や景気対策、中小企業や農業、漁業などの第一次産業、地方の疲弊などが複合的に吹き出して、党への不満や不信につながった気がする。党の賞味期限を向上させるため、自らを律して内なる改革を進めていきたい。
 「下がる?」には、治安や教育、医療、経済力など、さまざまな意味が含まれている。
 長崎県佐世保市での散弾銃乱射事件や、香川県坂出市で祖母と孫2人が惨殺された事件など、刹那的な凶悪事件が多発している。治安の悪化は、もはや大都市だけの問題ではない。他者を尊重し、思いやるという日本人の感情、伝統的倫理観が急激に低下している。
 教育も問題だ。OECDが57カ国・地域の15歳を対象に実施した学習到達度調査で、日本の高校生は実施3分野すべてで順位が低下し、トップレベルの分野はなくなった。資源に乏しい日本では人材こそが資源。子供たちの学力、考える経験の低下は看過できる問題ではない。
 賃金低下も見過ごせない。00年に比べて、株式配当は2倍、役員報酬は3倍に上がったが、賃金は下がっている。正規社員を減らし、賃金の安いパートや派遣といった非正規社員を増やす傾向が続いているが、こうした状況が長引けば社会の活力がなくなりかねない。
 「本物」は、わが国から少なくなってきた。横綱・朝青龍も、ボクシングの亀田兄弟も本物とはいえない。スポーツに限らず、本物の人物とは強いだけではなく、人格や品格を兼ね備えているものだ。
 事務次官が過剰接待に溺れていた防衛省をはじめ、ずさんな年金管理が国民の怒りを沸騰させている社会保険庁など、国民や社会に奉仕をする本物の公僕も減っている。政治の世界でも、命をかけて国家、国民のために尽くすような、本物の政治家がどれくらいいるのか。
 3つのキーワードに共通するのは、この国の現状に対する強烈な危機感である。日本はいま岐路にある。このまま日本人が萎えて国家として衰退していくのか、歴史と伝統に根ざした国民精神を取り戻し、再び活力ある国家を再建していくのか。08年は極めて重要な年だ。私は政治家としての原点を見つめ直し、刺激を持って戦っていきたい。