夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(6月20日掲載)


「近隣諸国との問題には毅然として対応を」
「相手ペースに巻き込まれるな」
 この1週間ほど、近隣諸国などと連続して問題が起きているが、いずれも相手ペースという感じがする。
 先週北京で開かれた日朝実務者協議で、北朝鮮は拉致問題の再調査と「よど号」犯引き渡しへの協力を提案した。日本政府はこれを「一定の前進」と評価し、「北との人的往来の規制解除」や「人道支援物資の搬送目的に限って北籍船の入港を認める」などを決断した。
 これまで北は拉致問題について、いい加減な説明を繰り返し、日本は何度も煮え湯を飲まされてきた。北が「横田めぐみさんのもの」として返還してきた「遺骨」がニセ物だったこともある。
 今回の協議は、恐らくトップの判断があったのだろうが、そのトップの対北政策に、政府と無関係な人物が影響を与えているという指摘がある。その人物の思惑や背景は一体何なのか。そういう人物が存在しているとすれば、不信感を持たざるを得ない。
 私も所属する拉致議連は16日、緊急役員会を開き、「拉致問題に具体的進展がない限り、制裁を緩和しない」「引き伸ばしやだましだった場合、より強固な制裁を行う」などを求める声明を決議した。今後も北に対しては「圧力と交渉」のスタンスで対応すべきだ。
 さて、日本と中国の主張が対立してきた東シナ海のガス田問題で、日中両国の正式合意が発表された。
 いわゆる、「翌檜(あすなろ)」(中国名・龍井)は共同開発するというが、対象範囲は日本側が広く「互恵」ではない。問題の発端となった「白樺(しらかば)」(中国名・春暁)は、中国の主権下で中国の法律に従って日本が投資して利益を得る。これでは日本の権益を放棄することになり、ガス田だけでなく他の国益をめぐる懸案事項にも波及してしまうのではないか。
 国益を守ってこその日中友好。国家として譲れない部分は絶対に譲るべきでない。政府は決して国益を損なうことのないよう、毅然として対応すべきだ。私は経産相時代、日本の民間石油会社に東シナ海での試掘権を与えた。政府は国益を守るためにもこの試掘作業を支援すべきである。
 こうした最中の今週初め、日本の領土である尖閣諸島周辺の日本領海を、台湾の抗議船と巡視船9隻が侵犯した。やはり領海侵犯した台湾の遊漁船が日本の巡視船と衝突して沈没したことへの抗議のようだが、台湾当局の船舶までが領海侵犯するのは初めて。外国主権による日本主権の侵害だ。
 日本政府は沈没事故について遺憾の言葉を伝えている。それにしても、台湾の馬英九総統就任や東シナ海ガス田問題の状況変化、チベット・ウイグル問題、中国・四川大地震の混乱、北京五輪直前というタイミングでの領海侵犯はどこか不思議だ。背後に隠された意図でもあるのか。日本としては法律に従って冷静に対応すべきだろう。