夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(7月4日掲載)


「北朝鮮外交は原則を守れ」
「物価高騰、ブラックマンデー直前の見方も」
「緊急経済対策を提言する」
 最近、北朝鮮による日本人拉致問題で事態が進展したかのように見せる動きがあるが、私はそうは思わない。むしろ悪い方向に進んでいるのではないか。
 先月の日朝実務者協協議で、日本は北が拉致問題の再調査を約束しただけで、経済制裁を一部解除する方針を決めた。直後の米朝協議を受け、米国は北へのテロ支援国家指定解除に着手した。日米同盟への悪影響も懸念されるが、これは日本がお膳立てをしたといわれても仕方ない。
 北外交でも内政でも、原則は極めて重要である。朝鮮は、日本人拉致という残酷無比な主権侵害、人権侵害を実行した独裁国家であり、日朝交渉の原則は「対話と交渉」と「拉致問題の解決なくして国交正常化はなし」である。
 交渉で対話を先行させるとプレッシャー(圧力)は弱まる。このため、日本政府はこれまで圧力を先行させて北の対話を引き出してきたが、最近は外交方針を転換したのか対話を前面に出そうとしている。
 日本は北に譲歩するカードを何枚も切ったが、北が約束を守る保証はない。相手は拉致被害者の横田めぐみさんのニセ遺骨を送り付けてきた国だ。日本はこれまで何度も裏切られてきた。
 これに対し、具体的進展もないのに、与党内には「年内の国交正常化」を吹聴する議員までいる。拉致問題について北に都合のいい幕引きを模索しているとの指摘もある。日米同盟への悪影響も含めて北の思うツボであり、北を利する状況がつくられつつある。
 表面上のきれい事で取り繕いながら、国益に逆行する動きは絶対に許しがたい。断固として対応していきたい。毒ギョーザ事件、東シナ海ガス田問題も「しかり」である。
 さて、7月に入りガソリン価格がまた値上がりした。食料品や日用品、電気・ガス代なども上がっており、国民の方々は家計のやりくりに苦労している。私も先日、近くのスーパーに出掛けたが、値札を見て生活必需品の高騰を実感した。
 あるエコノミストは「今月中にも大変なことが起きるかもしれない」と警告していた。金融恐慌とアジア危機、南米危機が同時に起こる懸念があり、「まるでブラックマンデー直前だ」という。日本はバブル崩壊から20年間も低迷しているが、世界的な経済危機か起きれば唯一好調だった輸出産業もダメージを受ける。
 今そこにある危機に対処するため、私は今月号の中央公論(10日発売)で緊急提言を発表する。減税から財政出動まで、あらゆる緊急経済対策を打ち出し、所得を増やして内需を喚起しようというもの。
 日本経済を守り、国民生活を守らなければならない。いま苦しくても、未来に希望が持てる国家にする。日本を沈没させるわけにはいかない。