夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(7月18日掲載)


「加藤発言は朝鮮中央通信の解説のようだ」
「拉致被害者を北朝鮮に返せなど、看過できない」
「緊急経済対策の反応上々」
「日本経済を元気にして、国民生活を守る政策」
 自民党の加藤紘一元幹事長がテレビ番組で、北朝鮮から帰国した拉致被害者について「北に返すべきだった」などと発言したことに、日本中から批判が殺到しているそうだが、私も看過できない。
 何の罪もない多数の日本国民が北の国家機関によって突然拉致され、たった一度の人生を無茶苦茶にされた。これほど残酷な国家的犯罪に遭われた被害者が20数年ぶりにやっと帰国できたのに、それを再び犯罪者のもとに返せと言うなど、一体どういう感覚をしているのか。
 拉致被害者の家族らが「貴殿はそれでも日本人なのか」「一体、どこの国の国会議員なのか」といった抗議文書を加藤事務所に送ったそうだが、まったく同感だ。
 加藤氏は番組で「国家と国家の約束だから」とも語っていたが、北は拉致被害者、横田めぐみさんのニセ遺骨の提供をはじめ、どれだけ日本にウソをついてきたか。そもそも、わが国の国家主権および国民の生命と安全を侵害する拉致という不法行為を行ったのは北である。
 今月初め、コロンビアの左翼ゲリラに6年間も拘束されていた元大統領候補らが救出されたが、組織に潜入した軍の情報部員がゲリラをだまして人質たちを連れ出したという。国家の基本は国民と領土と主権。犯罪者から国民を取り戻すためなら、手段を選ばないのが通常の国家の感覚である。
 加藤氏の「(北の金正日総書記は)あの国では天皇陛下のようなポジションの人物ですね」という発言に至っては、怒りを通り越してコメントのしようがない。加藤氏は元外交官で30年以上の国会議員歴を誇る先輩だが、一連の発言はまるで朝鮮中央通信の解説を聴いているようだ。
 最近、北の地下資源について推定440兆円という報道があったが、そのために拉致問題を矮小化して、国交正常化を優先するなど許されない。帰国を待ちわびる日本国民を見殺しにしてはならない。
 さて、私は先週発売の「中央公論」に緊急経済対策を発表した。世界同時不況の兆しも指摘される中、減税から財政出動も含めて、日本経済を元気にして、国民生活を守る具体的政策を記した。経済界を代表する人物からも賛同をいただくなど手応えを感じている。
 レギュラーガソリンの値段が1リットルあたり180円を突破するなど国民生活を苦しめているのに、官僚の中には「値段が上がれば税収も増える」などと不謹慎な考えをする輩もいる。財政再建ありきで、日本経済をつぶしてはならない。今月から9月にかけて大きなヤマ場がある。今日より明日が良くなるよう、今こそ思い切った経済対策を打ち出すべきだ。