夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(3月27日掲載)

「勇気と誇りを持てば、道は開ける」
「『心・技・体』 日本を元気にした侍ジャパン」
 今日からコラムを再開させていただく。G7の記者会見では、国民の方々、国、麻生太郎首相以下、政府・与党のみなさんに大変ご迷惑をおかけした。改めて、おわびを申し上げたい。自らの責任を重く受け止め、一議員として国民や国のために頑張りたいと思う。
 さて、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、「侍ジャパン」が連覇を成し遂げた。本当に素晴らしい。韓国との決勝戦の最中、私は残念ながら飛行機に乗っていた。到着ロビーで空港職員から「日本が勝ちましたよ」と知らされ、興奮した。その夜はスポーツニュースのハシゴをして、歴史的瞬間を目に焼き付けた。

 昨年の北京五輪で日本代表は4位に終わった。今回のWBC、米国をはじめ、キューバ、韓国、ベネズエラなど、他国チームの前評判が高かった。正直、私も連覇は期待していなかったが、1次ラウンド、2次ラウンドと勝ち進むに連れ、原監督や選手たちのコメントに独特の輝きを感じていた。
 先日、脳外科医が書いた「<勝負脳>の鍛え方」という本を読み、あらゆる分野で勝ち抜くためには「心・技・体」のバランスが重要だと再認識したばかりだが、監督や選手たちのコメントにバランスの良さを感じていた。スランプから立ち直り、決勝戦で大爆発したイチロー選手もそうだ。
 歓喜のシャンパンファイトの中で、イチロー選手が「日本のために頑張りました!」と叫んでいたが、世界的な経済危機が続く中、彼らは日本人に元気と活力を与えてくれた。「日本は大丈夫だ」という勇気をもらった気がする。「侍ジャパン」に心から感謝を伝えたいと思う。
 彼らの活躍を見ながら、私は彼らと同世代のある若者のことを思いだした。大阪から上京して都内の大学に通っていたが、人生の目標を見つけられず、自らを鍛え直すために、新宿駅東口(歌舞伎町)の早朝清掃を始めた青年だ。
 膨大なゴミの量、ヤクザの恫喝、「偽善者」と罵倒される日々…。そんな清掃を1カ月続けたとき、「一緒にやらせてくれ」というホームレスが現れ、ヤクザは缶コーヒーを差し入れるまで変わった。青年は清掃を半年間続け、生きる価値や他者に感謝する心を手に入れたという。
 日本や日本人は素晴らしい可能性を持っている。経済危機の中でも悲観的にならず、勇気と誇りを持ち、明るく前向きに努力すれば道は開ける。日本人の力を結集して、日本経済の潜在力を発揮すれば危機は克服できる。ピンチはチャンスでもある。私たちはこれから日本を元気付ける政策をどんどん出していく。「侍ジャパン」や早朝清掃の青年たちを見ると、日本の未来は明るいと信ずる。