夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(4月10日掲載)

「日本を守るため 早急に議論を」
「北の脅威は確実に上昇」
「日本人は自らの安全保障に目覚めよ」
 北朝鮮が5日午前、「人工衛星」名目で、日本の東北地方上空を横断させて弾道ミサイルを発射した。北は国連決議1695号および1718号によって、人工衛星でも弾道ミサイルでも実験を禁止されている。今回の発射は断じて許すわけにはいかない。
 「人工衛星の軌道進入に失敗した」とか、「日本に落下物はなかった」などといって安心している場合ではない。北はすでに日本のほぼ全土を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」を200基以上も実戦配備しているうえ、発射直前には「核爆弾の小型化に成功した」との報道もあった。

 脅威のレベルは確実に上がっている。日本人はこの事実を冷静に認識しなければならない。
 国連安全保障理事会で、新たな対北決議の採択を目指すのは当然。最も脅威を受けている日本として、どうやって国民の平和と安全を守っていくかを、外交努力と並行して安全保障面でも議論していくべきだ。
 核シェルターの整備も1つ。自民党の北朝鮮ミサイル問題に関する合同部会では、敵地攻撃能力の検討を求める意見が出されたようだが、自衛権の範囲内でできることもあるだろう。
 2年半前、私は「北に核やミサイルを発射させないため、何ができるのか。核を防御する真剣な議論が必要だ」と核論議を提起し、一部のマスコミに批判された。私は決して「核武装しろ」と言っているわけではない。「自分の国は自分で守る」という大前提の中で、米国やソ連、中国などが50年前に真剣に議論していたことを、わが国もやるべきだ。
 報道機関の世論調査によると、今回、日本政府が自衛隊に破壊措置命令を出したことや、北への制裁強化に動いていることに8割前後の人々が賛成だという。にもかかわらず、7日の衆院本会議で、北のミサイル発射に抗議する国会決議に、共産党が反対、社民党が棄権したことは理解できない。本当に、国民の平和と安全を考えているのか。
 中国による毒ギョーザ事件でも分かるように、日本人はある程度時間が過ぎると怒りが薄らぐ傾向がある。だが、北は1970年代から、日本人を拉致して工作員養成に利用し、同時にミサイルや核開発を進めてきた。この執念のような北の意志を侮ってはならない。
 弾道ミサイルをどうやって防ぎ、核をどうやって防ぎ、拉致をどうやって解決するのか。早急かつ真剣に議論しておく必要がある。日本人は自らの安全保障に目覚めなければならない。