夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(5月15日掲載)

「小沢辞任 党首討論直前に疑問」
「北朝鮮への制裁 不十分」
「絶対許さない 毅然とした姿勢を」
 今週初め、民主党の小沢一郎代表が突然辞任を表明した。自民党時代からサプライズ的な政治行動をする人物だったので、私個人としては「そういう選択肢もあるなあ」と受け止めた。
 ただ、GW明け早々、党首討論の直前という辞任のタイミングには首をかしげた。世界的経済危機に対応する政策や「政治と金」の問題について、2大政党のトップ同士の突っ込んだ論争を聞きたかった。

 日本は現在、経済対策や新型インフルエンザ対策などが危急の課題だ。民主党は13日、09年度補正予算案の衆院本会議での採決に欠席したが、極めて残念だ。新代表には選挙目当ての政局論に陥ることなく、国民生活を守るために国会審議に協力してほしい。それは、責任政党としての最低限の務めだと思う。
 さて先週、私は東京・日比谷公会堂で開かれた「拉致被害者の早期救出を求める国民大集会」に出席し、その異様な雰囲気に驚いた。
 河村建夫官房長官があいさつで、田口八重子さんの家族と、田口さんから日本語教育を受けた金賢姫元北朝鮮工作員の面会が実現したことなどを説明していると、会場から「いつまで待たせるのか」「政府は何もしていない!」などと、激しいヤジが浴びせられたのだ。
 2002年の日朝首脳会談で、北の金正日総書記が日本人拉致を認めてから、はや7年。国民の中には、拉致問題が依然として解決しないことに相当不満がうっ積していると感じた。
 不満の背景には、オバマ米政権が北に対して「対話優先」の姿勢を示していることもありそうだ。
 今月初め、拉致被害者家族会と国会議員でつくる拉致議連などが合同で訪米した際、米政府高官は拉致事件への「深い懸念」を表明したものの、訪米団の圧力強化の要請に対し、「制裁で北の行動を変えられるとは考えない」(ボズワース特別代表)などと語った。
 このままではいけない。 
 北が今年4月、「人工衛星」名目で日本上空を通過する長距離弾道ミサイルを発射した際、日本政府は制裁措置を1年延長するなどの制裁措置を科したが、私はこれでは不十分だと考えている。「ヒト・カネ・モノ」の分野で、もっと厳しい制裁を科すべきではないか。
 日本は「国民・国益を守る」という国家の基本を崩さず、北には毅然とした姿勢を取り続け、米国にも働きかけを続けるべきだ。他国から「日本人は時間が過ぎれば忘れる」と侮られてはならない。「拉致を絶対に許さない」「絶対に解決する」という強い意志を示すべきだ。