【講演】日本の実力 Vol.1 (2008〈平成20〉年6月29日)

2008年6月29日 青森県連青年局・女性部合同大会にて

◆はじめに

みなさまこんにちは。中川昭一でございます。
日頃、わが党の中核として、青森県連の女性部、青年部のみなさま方に大変お世話になっておりますことを、私からも厚くお礼申し上げます。
日曜日の午後、何かとお忙しい中を、こんなに大勢のみなさん方にお集まりいただきまして、嬉しいやら、緊張するやらと、今、複雑な気持ちでございますけれども、いただいたお時間の中で話を、日頃思っていることをお話をさせていただきたいと思います。
お手元に、大変見にくくて申し訳ないのですが、朝、ちょっと考えたことをぱぱっと書きにしまして、それを県連の方にコピーをしていただき、お配りをさせていただきました。これに沿って、お話をさせていただきたいと思います。
 表題が「日本の実力」ということでございます。
私は今は自民党の中で冷や飯を食っている立場の一人でございます。「冷や飯の会」というのがあるのですが、そのメンバーの一人でございます。
自民党の大実力者であります津島先生、今、日本の国会議員の中で一番苦労している大島国対委員長、その他青森県の活躍している多くの国会議員と違って、「冷や飯の会」はある程度自由な時間がございますから、いろいろ所でお話をする機会があります。
もっぱら食糧問題とか、あるいは拉致の問題、あるいはまた、エネルギー資源の問題、水の問題などが多いのですが、今日は、「日本の実力」という、私にとっても、新鮮な、そして非常に重たいお題をいただきました。
そういう意味で、昨日の夜、本当にかなりですね、寝ながらいろんなことを考えて、収集つかなくなりそうになっては、枕元のメモにばばっと殴り書きをしてですね。寝てるときの殴り書きってのは、結構いいアイデアが浮かぶんですけど、朝起きると何書いてあるか分からないという、若干苦労をした訳でございますけれども。
実力を知るには、まずは「今の日本の現状ってどんなことかなあ」と考えみたいと思います。ふるさとを愛し、青森を愛し、日本を愛しているみなさん方には、ある意味で当たり前のことからお話するかもしれませんが、改めて簡単に認識を共通にしたいと思っております。

◆面積・地理

まず面積はですね。
北方四島が5000平方キロと大体千葉県とか福岡県と同じ広さで、この固有の領土を足しあげても、38万平方キロです。
地球上の面積の0.4パーセントしかありません。世界の中でもそんなに大きくない広さの国であります。
で、お配りしているメモに「バリケード」って書いてあるのはどういう意味かというと、これは、相当昔ですけれども、でソ連から見た日本の地図という自民党のポスターが、昔あったんです。
このポスターを見て私、ハッと思ったんです。
例えば旧ソ連、今のロシア、あるいは朝鮮半島、あるいは中国から見るとですね、日本というのは太平洋に出るのに、わざわざバリケードのように邪魔な存在で、ぺたっと位置している。向こうから見ると、地理的に非常に邪魔なんですね。
オーストラリアみたいにどーんと広ければ違う印象かもしれませんが、わざわざ邪魔するみたいに細長ーくある、向こうから見るとそういう存在だということを、感じるわけでございます。
今申し上げた国々の親しい友人と話をすると、「日本という国がなければ、我々はもっと幸せで、発展していたんだ」という冗談なのか本音なのかわからりませんが、そんな話を聞いたこともあります。
我々も別にわざわざ邪魔するために生きているわけでは決してないのですが、日本という存在そのものが、北海道から青森、そして九州沖縄に至るまで、何となく邪魔な存在として、まず地理的に存在してしまっている。
しかし、引っ越すわけにもいきません。
こっちから見れば、北朝鮮あたりには引っ越してもらいたいと思うんですが、お互いにそういう訳にもいかないという、地理的な配置になっております。

◆海洋大国・日本

国土は狭いのですが、排他的経済水域(exclusive economic zone; EEZ)は200カイリ、つまり約370キロまであります。
領海は12カイリですが、経済圏域は200カイリ。
隣国と重なっているところは中間で引きましょうという、国際的なルールが確立をしているのですが、そういう形で排他的水域をとったとしても、実は日本は大変な海洋国家であるわけであります。
この青森の東側の海は三百数十キロまでは経済的には日本のもの。西側のほうは、ロシアや朝鮮半島がありますから、お互い重なり合いますんで、その中間までが日本の経済的な独占権があります。そこにある資源を活用しない手はありません。
しかも、世界の海の深さの平均は三千数百メートルなのですが、日本の周りは日本海溝とかですね、一万メートルぐらいの深さのところもありますんで、広さだけじゃなくて深さも含めた体積で計算しますと、世界で4番目の海の量を持った、大変な海洋大国であることを、我々は共通に認識したい、確認をしたいと考えております。
ただし、後で申し上げますが、地球上のいわゆる水のうちの、「真水」は2.5パーセントしかありません。97.5パーセントは海の水です。
しかも2.5パーセントの真水のうちの3分の2は、南極大陸やグリーンランドとかいった、大陸の上の氷です。残りの3分の1の多くは地下水。つまり、我々が普通に利用できる川や湖の水、言い換えば普段から普通に使えるような水は、本当にごくわずかでございます。
「日本は、水だけは豊かではないか」という声を耳にすることもありますが、一人当たりの淡水の保有量は、実は世界の平均の3分の1しかありません。
海の量では世界4位であったとしても、真水という点では、我々はそんなに豊かではないということを、知っておく必要があるだろうと思います。
あとで水の話はまたお話をしたいと思います。

◆人口

さて、日本の人口は1億2千数百万人。これは世界の2パーセント、世界で10番目です。これからどんどんどんどん、途上国を中心に人口が増えていきますし、日本はほぼ人口のピークを迎えて、これから徐々に減っていくわけであります。
江戸時代、日本の人口はだいたい3000万人であったと言われております。
そして明治になって、20世紀のはじめ、ちょうど1900年ごろがですね、人口は4000万人になりました。
第二次世界大戦後あたりで8000万人になり、それからまた徐々に増えて、今の数字になりました。
ここから先は厚生労働省の推定ですが、2050年には8000万人。約100年前、1945年ぐらいの数字になる。そして2100年には大体4000万人。これはその200年前の1900年の数字とほぼ同じですが、それくらいになるのではないかというのが、専門家の推計でございます。
しかも、あの当時のように子供が3人も5人もいたのと違って、少子の時代に入っていくわけです。人口の点からは非常に難しい時代になっていくのかなと、思う訳であります。
江戸時代は人口3000万人で、しかも鎖国をやっておりました。食料品は外国から入ってこなかった。お米や魚を中心に、自給自足の経済を、実は江戸時代には三千万人の人口の中でやっていたわけです。
でありますけれども、ひょっとしたら今、食糧問題やエネルギー問題、そして水問題などこれからますます厳しくなるであろうことがありますが、皮肉にもと言うか、逆説的な考え方かもしれませんが、100年後に人口が4000万人になったら、自給自足ができちゃうのかなということもちらっと頭をよぎったりもします。
そうなるかどうかはともかく、人口はこれからどんどん減少していくという厚生労働省の推計でございます。
(つづく)