「人権擁護・水 Vol.1」
2008年6月13日 昭成会にて
◆ねじれ国会
おはようございます。早朝からまた各地からありがとうございます。
今日で150日間国会が閉会する予定でした。しかし、ご承知のとおり、参議院で、議論をして反対ならいいのですが、議論もしないまま時間だけがどんどん過ぎて行ってしまいます。
3分の2の再議決で衆議院でやろう、とこちらが考え出すと、民主党あたりから「けしからん」という意見がでてきます。護憲、護憲と言いながら、ここの条文だけは憲法どうりにやるのはダメだとどうやらお考えのようでして、結局、大事な法案が成立しない状況になってしまいました。
したがって、1週間ほど会期を延長いたします。
その理由は、たった1つの条約案です。これは私が経産大臣の時からずっとやっておりました、ASEANとの自由貿易協定、いわゆるEPA協定です。
これはASEAN側はフィリピンを除いては、9か国がOKを出しているわけでありますし、またASEANとモノやサービス、あるいは投資、知的所有権等々の協定を結ぶことは、日本にとっても非常にメリットがあると考えています。
私は経産大臣の時にタイやマレーシアとずいぶん話をしました。農産物を外すという前提で苦労しましたけれども、その結果、向こうの工業品、日本が向こうで投資した工業品が、さらなる途上国にどんどん輸出ができるようになりました。
いわゆる南南貿易というメリットで、タイ・マレーシアとお互いには非常にうまくいっているわけであります。
ASEANの国々はある意味、ASEAN全体が一つの経済体になりつつあります。
日本と各国が個別に交渉するのでは限界があるということで、日本とASEAN10か国との間での共通の経済ルールとして作ろうというのが今回の自由貿易協定です。とはいえ、
例えばタイとやるレベルと、ラオスとやるレベルでは若干、差があるわけでありますけれども、とりあえずASEAN全体を共通の日本との経済ルールをつくろうということで交渉をし、
それが衆議院は通りましたが、このままでは廃案になってしまいます。
そこで、国会をあと1週間延ばすことによって、憲法に書いてあります「衆議院の優越」で決めよう、ということです。条約は、衆院議決案の受領後30日以内に参院が議決しない場合、衆院の議決が国会の議決となるんです。
こういうやり方も国民の皆さんにとって、わかりずらくおかしい話とお感じになるかもしれません。ただ、我々としてはこの自由貿易協定を廃案にするか成案にするか、日本の国益の観点から考えた際、それはどうしても成立させなければならないと考え、このやり方をとっています。ご理解頂ければと思います。
今国会を振り返ってみますと、衆参の「ねじれ」の問題が非常に大きな政治の停滞をうむ、と様々な場面で感じました。
経済や世の中が元気であればまだいいのでしょうけども、戦後、初めて実質所得がどんどん減っている状況、しかも、世界的には石油や食料品の価格は上昇、国内においては年金、あるいは医療といった問題・課題にすぐに対策をうつ必要がありますから、政治を停滞させる場合じゃないわけです。
しかし、「ねじれ」によって国会はたいへん政治的に厳しい国会でありました。
◆人権擁護法案とは
さて、話は変わりますが、毎日30~40通のメールを国民の皆さんから頂きます。今年の初めは冷凍ギョウザ問題。それからチベット問題。そして現在は人権擁護法案と外国人参政権問題がほとんどです。
そこで今日はまず、人権擁護法案についてお話していこうと思っています。外国人参政権の問題はあとで時間があったらお話したいと思います。
人権擁護法案がどういう法律か、わかりやすく説明しますと、この法律が出来たなら、安倍晋三、麻生太郎、そして中川昭一は3日で訴追される、そんな法律です。極端な話、と言いたいところですが、それがそうでもないかもしれない。
この法律で罰せられる対象は政治家に限られているわけではありませんから、皆さん方も訴追されるかもしれません。あるいは学校でお子さんが、例えば同級生に「お前バカだ」「ブスだ」「デブだ」とかなんとかって言うと人権擁護員がすっ飛んできて、取り調べをしたり、家の中を家宅捜索だってできる、という恐ろしい法案がいま審議されているわけでございます。実際そうなる可能性の話じゃなくて、条文にそう書くというのはさっきの憲法の規定じゃないですが、誰かがやろうと思えばできることになるんです。
もちろん差別はダメですし、やってはいけまないのは言うまでもありません。
しかし、人権擁護法案はそのような社会の当たり前のルールを法律として明記することで、悪用しようと思えばいくらでもできちゃうような内容です。平成の治安維持法とも言ってもいいかもしれない。
人権擁護法は、多分このままだと、今国会で法案提出されることになる。さすがに成立することはないと思いますけれども、
◆いわゆる「NHKの番組改変問題」
そういう中で、今日の新聞各紙に一斉に出ましたが、昨日いわゆる「NHKの番組改変問題」にからんだ最高裁判決がありました。
番組の題材となった“女性国際戦犯法廷”というグループがあって、ここがNHKを訴えていたわけです。平成12~13年に日本を含めた各国の女性人権活動家なる人たちが、第二次対戦についての模擬裁判にようなものをやりました。
それの番組内容が主催者の意図とは違う内容だったようで、それは「信頼の侵害だ」としてNHKを訴えました。
結果はNHK側の主張が認められた、つまり、そのグループは負けたんですが、裁判上の争点にはなっていないものの、内容が変わったのは一部の政治家による「圧力」があったのではないか、という問題も番組放映から数年後、マスコミが取り上げていました。
その一部の政治家とはおわかりの通り、安倍晋三と私です。
あの番組は平成13年1月に2,3回放送されたらしいんですが、一番問題になったのが、平成13年1月30日の放送分。その数か月後にNHKは訴えられました。
平成17年の1月のある日、朝日新聞の記者が「あなたは平成13年1月30日のこういう番組覚えているか?」って言うから、「覚えている」と答えました。
すると「NHKに文句をつけたか」と言うから、「意見は言った」と。
次に「それは番組に対する弾圧ではないか」と言うんで、「それは意見は言ったけれども、それをいつ言ったかまでは自分は覚えていない」と答えました。
その後、長崎で講演をしていた休み時間に電話がかかってきて、「テレビ放映の1月30日よりも前に、あなたが弾圧をしたという確たる証人がいる」と言って来ましたんで、「自分はともかく、日付までは覚えてない、番組のことで意見を言ったことは記憶をしている。日付は東京に戻ってから調べましょう」と言いました。
しかし、もう次の日、バーンと中川昭一と安倍晋三がかくかくしかじかのこの番組に圧力をかけたと記事になっている。そして、ほかのマスコミも追随してきたわけであります。
ちなみに、その後で証拠が出てきまして、私が意見を言ったのは、1月30日よりも後でした。議員会館の面会証を2月の初めにNHKの幹部が私の部屋にやって来たこと、それ以外にはないことがわかりまして、それを公表しました。
すると突然、朝日は一切報道しなくなった。
忘れたころに、検証という特集をやって、「いずれにしても日頃から安倍と中川はああいう問題に対して、いつも反対の意見だし、そしてNHKに対しても偏向報道、偏向報道といつも文句言っているから、今回は事前にやったという証拠はないけれども、しかしだからと言って圧力をかけていないという証拠もない」というようにも読めるような統括記事が出てました。
よっぽど裁判でもやってやろうかと思ったんですが、やめておきました。
(つづく)