「チーム麻生で日本を元気にする」
「補正予算、必要ならば第2弾、第3弾も」
「サラリーマンの賃金アップ策、考えている」
「悪循環を断ち切る」
「趣味やお酒の時間ない」
米国発の金融恐慌も指摘されるなか、中川昭一財務相兼金融担当相が本紙連載「言わせてもらおう」の特別インタビューに応じた。麻生太郎首相から「財政政策」と「金融政策」を兼務するよう伝えられた経緯や、金融不安を受けた政府の対応、民主党と激突する次期総選挙への意気込みなどに触れ、「チーム麻生で日本を元気にする」「必要ならば(補正予算は)第2弾、第3弾もやる」「(サラリーマンの)賃金アップ策も考えている」などと、キレ味鋭く語った。
--財務相と金融担当相の兼務は激務では
「麻生首相から『両方やってほしい』といわれたとき、『大変だ』と感じると同時に身も引き締まった。首相とは以前から親しかったうえ、昨年から衆院本会議場の席が隣になり、日本経済の問題点について語り合ってきた。問題意識は共有している。自民党総裁選でも『いまは麻生太郎しかいない』という信念で戦った。最初からトップギアで走っている」
--9月29日の米株式市場の暴落について、ニューヨーク・タイムズは「08年のブラックマンデー(暗黒の月曜日)」と表現した。米下院が金融危機対策の切り札だった金融安定化法案を否決したのが要因だ
「私も否決直後(日本時間30日未明)、財務省の担当者から電話で知らされ驚いた。とても残念だ。米政府と議会幹部が日曜日の未明まで議論して大筋合意したと聞いていた。米国民や議会に『税金によるウォール街救済』という批判が根強いらしい」
《米上院は10月1日、同法案の修正案を可決した》
--中川氏は昨年から、サブプライムローン問題が世界経済に与える影響について警鐘を鳴らしてきた
「この金融危機を放置すると、世界経済が非常事態に突入する可能性がある。日本は十数年前に金融危機を経験した。大手金融機関が次々と破綻し、『失われた10年』と呼ばれる長期低迷を余儀なくされた。私の地元・北海道も拓銀(北海道拓殖銀行)破綻で厳しい状況が長く続いた」
--どうすべきか
「日本は必要な対策を取っている。わが国の金融システムは健全だ。何よりも、米国が金融安定化法案を修正してでも早急に可決しなければならない。金融危機には『資金市場への流動性の供給』や『金融機関の資本増強』を一気にやるべき。私が今月、G7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)でワシントンに行くことになれば、米議会関係者に日本の経験について直接訴えてもいい」
--麻生内閣は先月29日、緊急経済対策の実施に伴う約1兆8000億円の補正予算案を国会提出した
「まず、第1弾だ。日本経済を回復させ、国民の暮らしを元気にするために早急に成立させる。米国発の金融不安を受け、必要ならば第2弾、第3弾もやる。いま、そこにある危機を前に何もしなければ、『政治と行政の怠慢』と罵られても仕方ない。やるべきことは何でもやる」
《首相は1日、2次補正の検討を示唆したが、中川氏は3次補正までも視野に入れているのか》
--10月1日から、食品や生活必需品が上がった
「輸入に頼っている原油と原材料の高値が続いている。9月30日発表の家計調査では、消費支出が前年同月を6カ月連続で下回った。家計にシワ寄せが来ており、放置できない」
--中川氏は本紙連載で、個人消費刺激のために「国民の賃金を増やしたい」と書いた。サラリーマンの賃金アップは可能か?
「いろいろ対策を考えている。企業業績の悪化→従業員の給与ダウン→消費の落ち込み…という悪循環はどこかで断ち切らなければならない。2000年以降、所得が横ばいというのは異常だ」
--首相は「3年間の増税凍結」を示唆した
「好況時に増税しても景気は冷え込む。今やれば永久凍土になる。景気回復が最優先だ」
--麻生内閣の発足直後の支持率は50%前後だった。予想外か
「ご祝儀相場で内閣支持率が上がるほど、日本経済は好調ではないということだろう。ただ、これから麻生内閣は国民の痛みや不安に対処し、日本経済を強固にしていく。チーム麻生の打ち出す政策で、日本が明るく元気に、未来に向かって進み始めれば、支持率は一気に上がる」
--中山成彬前国交相の舌禍はどうか
「あれは不適切な発言だった。残念だ」
--次期総選挙は、小沢民主党と激突する
「いずれ選挙はある。ただ、現在は米国の金融危機への対応や、日本の景気回復を進める方が先だ。麻生内閣としては、日本経済を前進させ、国民の暮らしを改善してから、審判を受けたい。民主党は野党ならではの政策を並べているが、それらを実現すると約20兆円、消費税率8%増が必要となる。財源の裏付けを明確にしてほしい」
《麻生内閣は、早期解散より景気対策という方向性のようだ》
--財務相や金融担当相は24時間動いている世界経済に対応する。しばらく趣味も封印か?
「夜中でも、大きな動きがあればすぐに連絡が入る態勢になっている。私はテニスと自宅で花を育てるのが趣味だが、テニスラケットも庭の花も泣いている。好きなお酒も飲んでいる時間がないよ」