夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(12月10日掲載)


「相次ぐ地方自治体の不祥事」
「公人としての立場。恥を知れ」
「政治や行政に携わる者は『武士道精神』を」
 地方自治体を舞台にした官製談合事件が相次いでおり、福島県や和歌山県ではトップの知事が逮捕された。宮崎県でも辞職した前知事の逮捕が秒読みといわれている。極めて残念と言うしかない。
 予算編成権や人事権などを握る知事は、もともと「大統領」に例えられるほど大きな権限を持っていたが、小泉内閣が進めた「三位一体改革」や「地方分権」の影響もあり、さらに力を増長させている。
 半面、国会議員の地方での力は落ちている。
 法的にも道徳的にも公共事業の口利きはできないし、小選挙区制になってサービスの量、過激な競争はなくなってしまった。部分利益ではなく、地域や国民全体の利益のために働くのが国会議員。陳情も減っており、無理な陳情は事情を説明して理解してもらっている。
 報道を見ていると、逮捕された知事らは選挙時のしがらみなどもあり、特定の業者を優遇する「天の声」を発していたようだ。私腹を肥やしていた許しがたい人物もいる。地方行政だけでなく、政治全体の信頼を損なうものであり、検察・警察当局の厳正な捜査を期待したい。
 自治体トップではないが、目黒区議会議員らの政務調査費の公私混同ぶりもひどい。
 政務調査費は「区政政策にかかわる調査研究費」だが、自家用車の車検代(約6万円)を「調査研究中の故障修理」代としたり、カーナビの購入費(約16万円)を「事務費」として全額請求したり… 。一体、公人としての立場をどう考えているのか。「恥を知れ」といいたい。
 目黒区のケースは論外だが、国民の「政治と金」「行政と税金」に対する意識は大きく変わっている。私も仕事とプライベートのお金を明確に区別するよう心がけている。会食した役人が同級生という複雑な場合もあったが、自分の心の中では一線を引いているつもりだ。
 農水相時代にはこんなことがあった。長年、山林に入る林野庁職員の地下足袋が「特殊な製品」として随意契約になっていたが、これを一般競争入札に変更させた。税金を預かる以上、いい製品を少しでも安く購入しようとするのは当然だろう。
 地方自治体の不祥事が続いているが、中央から地方に権限や財源を委譲する地方分権の流れは止まらない。だからこそ、知事や市町村長、地方議員らの責任が厳しく問われるのは当然のことだ。 ノーブレス・オブリージュ。身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある。政治や行政に携わる者は、日本人が忘れかけた「武士道精神」に習って、自らを律していくべきではないか。自戒を込めて。