夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(2月16日掲載)


「政府は毅然とした態度貫け」
「北朝鮮への支援をしない方針を全面的に支持」
「日本は決して孤立化していない」
「国家の基本方針がグラつけば国際的信用を失う」
 北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議で合意文書が採択された。北が寧辺の核関連施設を停止・封印する見返りに、他の参加国が重油5万トン相当のエネルギー支援を行い、その後の措置履行に応じて、最大で重油100万トン相当を支援する-というものだ。
 協議を合意させた関係各国の努力は評価するが、これまでの北の言動を見てきた限り、簡単には信用できない。
 合意文書には、北が現在保有する核兵器の廃棄が含まれていないうえ、朝鮮中央通信は合意当日(13日)、核施設の稼働は「一時中止」と報道したのである。国際機関による徹底した監視が必要だろう。
 テロ支援国家指定解除のための米朝協議の開始も疑問だ。日本人拉致や大韓航空機爆破、米ドル偽造、覚醒剤の密造、ミサイル転売など、これまで北が行ってきたことはテロ支援国家というより「テロ国家」というべきもの。米国に対して指定継続を要求している。
 今回の合意にあたり、日本は安倍晋三首相の強いリーダーシップで、拉致問題での進展がない限り、エネルギー支援などを一切行わない方針を明らかにしている。私は首相の毅然とした姿勢を全面的に支持する。
 朝日新聞や民主党の前原誠司前代表らが「日本も積極的にかかわっていくべきだ」「日本だけが(エネルギー)供給しないのは6者協議の中で発言権を失うのではないか」などと異議を唱えていたが、とんでもない話だ。
 国民の命がかかわる「拉致」という許し難い主権侵害に対し、わが国は人道的立場からも、国家的立場からも一歩も引くことなく主張しなければならない。他国は日本の対応を見ている。ここで簡単に譲歩するようだと、「日本は拉致問題を本気で考えていない」「主権侵害に甘い国だ」と見下される。それこそ国際的信用を失うことになる。
 日本は決して孤立化していない。北に本格的な経済支援を行うことになれば日本の存在は不可欠なのだ。日本抜きで北の復興はあり得ない。「6カ国協議に日本は参加する必要ない」と強弁していた北を含め、参加国はそれを認識している。一番いいカードは日本が握っているのである。
 これまでも北の主張に近かった朝日新聞はともかく、安全保障の専門家である前原氏までがこうした発言をしたのは残念だ。日本はブレない姿勢を貫くべきである。国家の基本方針がグラつくようでは、拉致だけではなく、領土問題や領海問題でも他国に付け込む隙を与える。これは外交では絶対に避けなければならない。拉致や核の解決は、国民の支持にもとづく政府の毅然とした対応以外にない。