文藝春秋「諸君!」 インタビュー記事(3月1日号)


「北京オリンピック」ボイコットも選択肢に
安倍政権は周りが問題 
― 北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議が2月13日に合意に至りましたが、94年の米朝合意に酷似していて、逆戻りではないかという批判もあります。どのように評価しますか。
 中川 合意に至ったとはいえ、基本的に北の約束は信用できないと思っています。合意どおり寧辺の核関連施設を停止・封印するのか、国際機関が厳しく監視していくことが必要です。合意当日の朝鮮中央通信がすでに核施設の稼動を「臨時停止」と報道しているくらいですから、今後、北はどう出るかわかりません。
 しかも残念なことに、合意文書には大きな欠陥があります。難航した協議を合意に持ち込んだ関係各国の努力は評価したいのですが、すでに北が保有する核兵器に関する記述が一切含まれていないのです。これでは現在進行中の核開発も昨年10月の核実験も闇の中に取り残されてしまいます。
 評価できるのは、拉致問題に進展がない限り、日本がエネルギー支援等を一切行わないという方針を貫いたことでしょうか。これは安倍総理のリーダーシップが大きかったと聞いています。
― 年初から安倍晋三首相に対する支持率の低下が目立ちます。一月に入って不支持が支持を上回る調査も出てきました。
 中川 NHKの調査(2月13日)でも遂に逆転したという話を聞いたばかりなので、ちょっと気がかりではありますね。支持が41%、不支持が43ということですが、この逆転の原因は安倍総理本人の問題ではないと私は考えています。総理本人の問題と唯一言えるのは、適時適切なコメントを発信するのがうまく行っていないことだけでしょう。正直言って大臣の事務所費問題や不適切発言に関して、安倍総理の対応がもう少し違っていたらと思うことはありました。
 だけどやっぱり周りが問題なんですよ。本来、総理を補佐する立場の人たちが足を引っ張っている面はあると思います。
 具体的に言えば、鳴り物入りで始まった首相補佐官は残念ながら目立った活躍ができていませんね。総理の諮問機関も「教育再生会議」はじめいっぱいありますけれど、どうもうまく機能している感じがしません。
 2月7日に、教育再生会議を担当する山谷えり子首相補佐官が中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)を「大ざっぱなことを延々議論している」とか、「オープンでない」と批判したのですが、やはり彼女は総理の補佐官であって、内閣全体の補佐官ではないわけですから、あの発言はちょっと行き過ぎた感はありました。
 安倍総理はどんな人の意見でも耳を傾けますし、温厚な人柄ですからみんな意見を言いやすいんですね。だから、周囲からああいった発言が出るんでしょうけれど、小泉(純一郎)さんの時代だったら考えられませんよ。小泉さんの時代は総理とちがう意見を言うと、えらく怒られましたからね(笑)。私も小泉さんにはずいぶん怒られた記憶があります。訪朝した時、金正日をわざわざ出迎えるような映像があったので、「あれはおかしい」と直言したら激しく反論されました。小泉さんの場合は安倍総理とは正反対のタイプなので、総理と議論をするのは麻生(太郎・外相)さんと私くらいでした。
― 安倍首相の周囲が言いたい放題の“百家争鳴”状態で混乱しているという感じでしょうか。
 中川 そうですね。結果的にそうなっています。ところが、逆に事務方のトップである的場順三官房副長官の顔が見えて来ませんね。事務の副長官は裏方の責任者だから内閣の要です。私も内閣にいた時には、要所要所で副長官が難しい調整をしていたのを見てきました。それだけにもう少し評判が聞こえてきてもいいような気がするんですが。
 いずれにしろ下がった支持率は、政策によって上げていくしかないと思います。教育再生のための中身をいよいよ充実させて、少子高齢化社会にふさわしい福祉のあり方も整備していかなければなりません。何より安倍総理は憲法改正と集団的自衛権の保持を視野に入れていらっしゃると思いますよ。
 世論調査を見ると、憲法改正は国民の過半数が支持しています。しかし改正の中身まで具体的に議論が進んでいるかといえば、まだそこまでは行っていません。憲法改正は自民党結党以来の悲願ではありますが、なかなか実現できませんでした。日本の基本法を変えていく作業になるわけですから、ある程度時間をかけ、国民的な議論にまで広げていかなければなりません。
 ― 昨年10月に「核に関する議論はあってもいい」と発言して、たいへんな批判を浴びましたが、いま振り返ってあの騒動をどう評価していますか。
 中川 私はいまでも当たり前のことを発言したと思っているんです。
 以前から東京を火の海にすることもできると豪語していた北朝鮮が、弾道ミサイルを持ち、核弾頭を持つにいたった以上、これは日本にとって確固たる脅威ですからね。最低限でもヨーロッパのように核シェルターを整備すべきかとか、放射能汚染防止対策をすべきかといった議論は遠慮なくどんどんすべきでしょう。
 私は何も「日本も核武装をしろ」と言っているわけではないんです。しかし歴史的に見れば、とあえて言いますけれど、敵国からの核攻撃を防ぐには、核兵器を持つしかないというのが国際政治の常識ではありますね。
 そういった議論をしないで、頬かむりをしたまま国が何も反応しなければ、単なるバカに見られるだけです。あるいは、何かとんでもないことをじーっと考えている不気味な国だと思われる。実際には、何も考えていないんですけれどね、全然(苦笑)。でも考えていないとすれば、そのことが問題なんですよ。日本が一番気をつけなければいけないのは、「顔が見えない」、「何を考えているのかわからない」不気味な存在だと誤解されることです。
「北朝鮮のような物騒な国に核を持たせないようにするにはどうしたらいいか」
「もし北朝鮮が核保有国となったら、日本はどう対処すべきか。それを廃棄させるために日本はどう行動すべきか」
 日本人が必死になって考え、議論し、日本の考えを世界に発信していかなければなりません。私の発言への批判の渦中で気づかされたのは、日本人はいつの間にか「非核三原則(持たず、作らず、持ち込ませず)」に「語らず、考えさせず」を付け加えて、「非核五原則」を金科玉条にしてしまっているということでした。「語らず、考えさせず」ではせっかくの民主主義が台なしではないですか。
 ― 「核議論」発言の直後にアメリカに行かれましたが、あちらの反応はどうでしたか。
 中川 いろんな人とお話ししましたけれど、「日本が核兵器を持つと、日米同盟はどうするんだ。日本からアメリカと手を切るつもりか」と心配する人が多かったですね。日本でもそうかもしれませんが、「核保有イコール自主独立」「日米安保放棄」と考える人が意外と多い。これは日本の説明不足、つまり議論不足が危険な誤解を招いていると私は受け止めました。
 私は予見しうる将来においては、日米同盟なくして、日本の平和と安全を守ることはできないと考えています。特に今後、覇権主義に突っ走るであろう中国に対抗していくには、アメリカ、オーストラリア、インドなど自由、民主主義の価値観を共有できる自由主義諸国との同盟関係をしっかり築き上げていくことが不可欠です。
 ― 中国と言えば、1月12日に人工衛星を弾道ミサイルで撃ち落す実験を行って世界を驚愕させました。日本も抗議しましたね。
 中川 なぜああいうことをするのかと首を傾げますね。宇宙空間に危険な破片を撒き散らしただけでなく、宇宙の平和利用の原則に対する重大な背信行為ですよ。日本はアメリカ、ロシア、欧州各国とともに強い抗議をしたのですが、中国が正式回答をしたのは1月22日になってから。国際的な抗議を10日間も無視したのには正直いって驚きました。これで中国が国際社会のトラブル・メーカーであることがますますはっきりしましたね。
 2008年の北京五輪が終わるまでは平和路線で行くのだろうと楽観していたのですが、やはり軍部が先走っているのかもしれません。オリンピックを何とか成功させようと、町の風紀をよくさせたり、環境を改善したり、殊勝な努力を重ねているようですが、『毛沢東秘録』(産経新聞社)や『マオ』(講談社)を読んでよくわかるのは、中国が建国以来、先軍国家であることです。外交部は表向きは「知らなかった」と言っていますが、そんなことはどうでもいいことで、大事なことは中央軍事委員会主席(人民解放軍トップ)を兼任する胡錦濤国家主席の命令または許可のもとで行われたということです。
 いずれにしろ中国の覇権主義的な動きが目立って来ているのは要注意です。最近のアフリカへの進出ぶりは全世界が注目するところで、レアメタルなど資源を狙った投資の勢いは凄まじく、もはや半植民地化されているとさえ言っていい。先日、アフリカの某国の大使に会ったら、「日本がしっかりして欲しい」と訴えて来ました。
 当然、日本への攻勢も強まっています。上海総領事館の電信官自殺事件や東シナ海のガス田開発問題における中国の対応を見ていると、他国の権益を侵害しても恬として恥じない覇権主義を感じざるを得ません。
 いっぽう国内でもますます規制が厳しくなり、社会の異常さが際立ってきています。世界では例を見ないグーグルの規制、情報封鎖体制が確立され、政治犯の逮捕やウイグルやチベットにおける民族運動の弾圧など大規模な人権弾圧も相変わらずです。隣国としてはちょっと見るに見かねる状況ですね。
ガス田はもっと主張していい
 
― 1936年のベルリン・オリンピックは、結果としてナチス・ドイツの国威発揚に世界が手を貸してしまい、その後の第二次大戦を引き起こす遠因になったとも言われます。場合によっては二〇〇八年の北京オリンピックのボイコットも考えられますか。
 中川 1980年のモスクワ五輪の時はソ連のアフガニスタン侵攻(79年末)という目に見える野蛮行為があったので、日本もアメリカなど多くの国とともにボイコットしましたよね。当時、反ソだった中国もボイコットしました。でもいま日本がボイコットを検討するのは時期尚早でしょう。しかし台湾への侵攻や大規模な人権弾圧などがこれから1年の間に起これば話は別ですよ。日本にそれだけの勇気があるかどうかはわかりませんが、その選択肢は常に頭に入れておく必要がありますね。
 何より中国は、今や世界にも稀な共産主義独裁国家であることを忘れてはなりません。胡主席にしても、温家宝首相にしても、国のトップであるより先に、共産党のトップであります。彼らが責任を負っているのは党に対してであって、中国国民に対してではありません。
 私たち日本の政治家にとっていちばん怖いというか、緊張しなければならないのは有権者でありマスコミですけれど、彼らはマスコミすらも中央宣伝部の支配下に置いている。ロシアのプーチン大統領の強権政治が話題になっていますが、問題が公になるだけまだマシです。中国、北朝鮮の場合には、そもそも国内で何が起こっているのかすらわからないのですからね。安倍総理ははっきり言いませんが、価値観が共有できない国であることは間違いないでしょう。
 中国に対して日本はもっと主張していいと思います。東シナ海のガス田に関していえば、中国が2003年から日中中間線のすぐそばにある春暁ガス田で開発を続けており、このまま放っておけば日本側の鉱脈まで吸い取られかねない。私は2005年に経済産業大臣だった時、事務方と相談の上で中国への対抗措置として、日本の民間石油開発会社に試掘権を許可しました。ところがこれがその後どうなっているかというと、中国側の意向に配慮するばかりに、いまだに行使できずにいるのです。つまり中国は開発を続けているのに、日本はただ傍観しているだけ。政府間交渉は続けているようですが、中国の対応ぶりを見ていると明らかに時間稼ぎに入っています。日本としては、国益を守る立場からも毅然たる対応をすべきです。
 フィリピンだってベトナムだって、南沙諸島の領有権を巡っては中国とかなりはげしく争いました。主張すべきところは主張し、対立することを恐れないというのは外交の常識なのです。ところが日本はいつもそれができずにいます。例えば、尖閣諸島は日本が長年、領有してきた島ですが、中国はそれを認めず実効支配しようと着々と布石を打ってきていますから、早めの対抗措置が必要です。日本も主張すべきは主張する勇気を持たなくてはいけません。
 2008年に対中円借款(ODA)がようやく終るのは目出度いことです。しかし、訪中した額賀福志郎前防衛庁長官に唐家璇国務委員が「対中円借款が近く終了するに当たり有終の美を飾るため、省エネルギーや環境などの協力関係を構築できないか」として「省エネセンター」の設置を提案したというニュースには、思わず「何が有終の美だ!」と思わざるをえませんでした。
 宇宙衛星を撃ち落すような国、アフリカに膨大な投資・援助をしている国にどうしていまさら金を貸さないといけないのか。中国は何かというと、やれ我が国は環境対策が遅れている、やれ日本の技術が欲しいと言いますが、「だったら買ってください」と言えばいいのです。経産大臣の時に、中国の閣僚とも話す機会がありましたから、彼らが環境や省エネについて真剣に考えていることは私も知っています。だけど日本のお金を提供することはないわけです。自国の莫大な軍事予算を少し削ればいいことですよ。
 どうも中国の日本への対応を見ていると、かつての朝貢国に対するような見下した態度が見え隠れするのがいただけません。
 安倍総理は就任早々に国内の反対を押し切って訪中しました。訪中はそれなりの成果を収めたからいいのですが、その返礼として今度は四月に温首相が訪日するという。ところが胡主席の訪日は「政治日程上むずかしい」と言って断ってくる。そしてまた今年の10月に安倍総理に来いと言う。
 これはどう解釈したらいいのか。中国のトップは温首相ではなくて胡主席です。温首相の訪日は安倍総理の訪中とは外交上釣り合いません。これは日中関係にとってはたいへん不幸なことです。中国共産党は格の違いを国内でアピールしたいのかもしれませんが、日本では中国への不人気が高まるばかりであることを忘れてはなりません。こんなことを続けていると、日本国民の中国に対する不信感は募るばかりです。
 ― 温首相の4月訪日には、安倍首相の靖国神社参拝への牽制を感じますが、首相の参拝についてはどう考えていますか。
 中川 私から何か言うと、安倍総理には迷惑をかけるのではないかと思います(笑)。実際、参拝されるのかどうかわかりませんが、総理の気持ちはよくわかっているつもりですので、私から改めて何か進言することはありません。
 昨年、私が農林水産大臣として8月15日に参拝したら、中国の王毅大使がえらく怒っていました。王大使は人格的に立派な方だと思っていますし、時に応じて意見交換する間柄なのですが、彼としては出先の大使としての立場もある。怒らざるをえないのも理解しているつもりです。
 靖国参拝をめぐる不幸は早く終らせなければなりません。戦争で亡くなった方を追悼するのは、万国共通のことであって、外国にとやかく言われるようなものではない。以前は、天皇陛下はじめ皇室の方が参拝されていたわけですから、一刻も早く誰もが自然に参拝できるような環境を実現したいですね。
要は記者の確認不足 
― 1月29日に東京高裁で、例の“慰安婦番組”改変訴訟に対する判決があり、NHKに200万円の支払いを命じる賠償命令が出ました。中川会長は、「朝日新聞」で放送前日に「NHKの幹部を呼び、『やめてしまえ』などと放送中止を求めた」と報じられた当事者です。今回の判決をどのように見ていますか。
 中川 正直いって、「朝日」の記事はもともと私と安倍総理を標的としたものだったんです。「朝日」の第一報(2005年1月12日付)で「中川昭・安倍氏『内容偏り』 前日幹部呼び指摘」と書かれたんですからね。それがいつの間にか朝日とNHKの問題になっている。私は非常に心外に思っています。
「そうじゃないでしょう」と私は言いたいですね。そもそも「朝日」が「政治家がNHKに圧力をかけた」と書いたから、大問題に発展したわけですよ。政治家の姿勢こそが問われたわけで、NHKと市民団体の争いだけだったら、それほど大きな問題に発展しなかったはずです。
 ところが、「朝日」の記事は事実関係がまるっきり間違っていました。私の場合、放送前日   (01年1月29日)にNHK幹部に会った事実はないのです。NHKの幹部に会ったのは放送から3日後の2月2日。それでどうやって番組に圧力をかけられますか。そもそも問題の番組自体、後にも先にも1回も見たことがありません。今回の判決でも、裁判官は私と安倍総理の圧力について「認めるに足りない」と認定しています。
 にもかかわらず、今回の判決に対しても「朝日」は社説(07年1月30日付)で「NHKは国会議員の意図を忖度し、当たり障りのないように番組を改変した」「朝日新聞の報道に対しては、政治家とNHKから事実関係について反論があった。これを受けて検証を重ねた朝日新聞は一昨年秋、記事の根幹部分は変わらないとしたうえで、不確実な情報が含まれてしまったことを認め、社長が『深く反省する』と表明していた」と書いています。何を言いたいのやら(笑)。「根幹」は変わっているんですよ。素直に誤りを認めるべきです。
 ― 最初の記事が「朝日」に掲載になる前、記事を書いた本田雅和記者とはどんなやり取りがあったのですか。
 中川 長崎で講演している時に、突然電話がかかって来て、何年前の何月何日にNHK幹部に会ったかと聞かれたんです。正確な日付は覚えていませんでしたが、会ったことは覚えていましたから「会った」と答えました。番組が扱った「女性国際戦犯法廷」については、昭和天皇に有罪判決を下した妙な“裁判ごっこ”だと噂には聞いていましたから、「裁判ごっこをするのは勝手だが、公共放送で流すのはおかしいと言った」と話しました。
 そうしたら本田記者は十分な事実確認もせず、中川、安倍両人が「放送前日にNHK幹部を呼んで『偏った内容だ』などと指摘していたことが分かった」「(中川氏は)放送中止を求める発言もしたという」(05年1月12日付)と見てきたようなウソを書いたわけです。
 問題は記事に書かれた事実関係が正しいかどうかです。記事が出た後、大騒ぎになりましたので、こちらも事務所を挙げて必死で事実関係を調べたら、NHKの幹部に会ったのは2月2日と、議員会館の面会票でわかりました。
 私もあいまいな記憶で本田記者の質問に答えたことにいくぶんかの反省はありますが、出先にいる議員に突然電話をかけて、四年前の出来事について質問したところで、どれだけ正確な事実関係を把握できるでしょうか。そのリスクをわきまえておくのが記者の役目でしょう。そもそも記事というものは記者と新聞社の責任において発表されるもののはずです。自ら事実関係の確認を怠りながら、最初からこちらに責任を負わせようとする取材姿勢はいかがなものかと思います。
 即刻、代理人を通じて、朝日新聞社に謝罪と訂正を求める通告書を送りました。ところが朝日は自分たちが間違っていたことをあくまでも認めようとしない。
朝日から連絡が来ない 
― その後、朝日は中川会長に対してどういう説明をしているのですか。
 中川 それが何もないんです。ふつうあれだけの報道をして事実誤認があったなら、「報道被害者」である本人に対して何らかの説明があってしかるべきなのに、何も言ってこない。党も私もきちっとした場でお話をしたいと何回も申し入れているのですが、向こうは完全にダンマリを決め込んでいます。いや黙っているだけでなく、こちらへの取材もなく勝手に紙面(05年10月1日付)で検証して、訳のわからない結論を出しているんですよ。その検証報道では、第三者機関が検証したというのですが、茶番もいいところです。検証するならば、当事者の私にきちんとコンタクトを取って、話を聞くべきでしょう。
 ― 朝日からはまったく連絡がないのでしょうか。
 中川 朝日からの反応といえば、1回か2回、封書で何か届いたことはあります。しかし何の説明もなく一方的に送られて来たものですから、開けないまま返しました。ですから何が入っていたのかはわかりません。送り主も「朝日新聞社広報室」とあるだけで、何の件か、担当者の名前もない。常識として個人名を書くのが普通ではないでしょうか。あるいは封書を送るのなら、説明の電話が一本くらいあっていいのではないでしょうか。
 失礼というか、第一不気味です。それこそ今の子どもたちを批判するんだったら、まず朝日の大人たちが反省しろと言いたくなります。都合が悪くなると塹壕に籠もって、何も言わなくなるんだから情けない。不信感を持ちますよ。
 なぜか本田記者と私のやり取りが「月刊現代」(2005年9月号)に漏れたのも不愉快でしたね。明らかに朝日関係者が情報を流しているわけですから。人伝に聞いたところでは、本田記者はその後も着々とご“栄転”されているとのことですから、朝日の規律は一体どうなっているんだろうと思いますよ。
『発掘!あるある大事典Ⅱ』でデータを捏造してまで納豆ダイエット論を放映した関西テレビが大変な批判を浴びるのは当然だと思いますけれど、朝日は先の社説を見てもわかるように、今回の件であたかも自分にも理があるかのように巧みに振舞っています。私はきちっとけりを付けたいのですが、朝日は白黒ハッキリさせるのは得策ではないと考えて、このままズルズルと私の言い分も聞かずに済ませたいと考えているんでしょうね。私は戦いは終っていないと思ってますから、今後も朝日を徹底的に追及するつもりです。