演題 : 「エネルギー・食料・水」の危機
皆様こんにちは、中川でございます。ほんとにお忙しいところをこんなお時間に志帥会の集まりのためにお集まり頂きましたことを私からも心から厚く御礼を申し上げます。
私は今ご紹介頂きました様に、もともと発生当時からの志帥会のメンバーでございますが、経済産業大臣、それから農林水産大臣、現在は党の政策責任者という立場でございまして、そういう3年間の閣僚の時の思い、それからもっと言いますと、私の地元は北海道の自然地帯・農業地帯でございまして、そこでの色々な体験、さらには、私がサラリーマンになった時は第二次オイルショックの時代でございまして、そんなこと等を体験をしながら、やはり日本あるいは世界が人々が安心して暮らせるための、とりわけ日本にとってですね一番大事なポイントは、平和とそして最低限の必要な物資、つまり、エネルギー資源、鉱物資源等、食料、そして水であるということを痛感し、しかもまぁ最後の水については、「何を今更」というふうに思っていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんけれども、実はそれが一番怖いなぁと私自身考えており、そのことを最近勉強したり、いろんな所で会合を持っているわけでございます。
本日このあと「真打ち」とも言ってもよろしい伊藤元重先生にお話を頂くわけでございますけれども、この問題に関しまして、経済の幅広いご専門の立場から、水についても私は伊藤先生からも色々とご教授を頂いているところでございます。
日本は言うまでもなく世界と仲良くし、貿易をし、そしてお互いに交流をしながらwin-winの関係を作っていこうと、そしてまた、そうしていかなければ生きていけない国でございます。まぁ日本という国を改めて簡単に確認をして参りますと、言うまでもなく、面積は世界で61番目の国でございます。とっても小さい0.2%しかない国でこざいます。人口は10番目、1億2500~2600万人いるわけでございます、10番目の国。一時期は4番目5番目だったんですけれども、途上国を中心にどんどん出生率の差というものが出てきて参りまして、今後ますますこの順番は下になっていくわけでございます。ただしご承知のとおり、我々世界一の長寿国家であるわけでございまして、現在男性は4番目、女性の方は世界最長寿の国でございます。
さらに50年後の人口統計推測によりますと、男性がやっと今の女性の歳、83歳、4歳ぐらいに45年後ですね、2050年には追いつくという計算になっておりますけれども、どうしても男は女性に年齢や寿命で追いつくことができない。これは都知事になられました石原慎太郎さんの説によりますと、これはもう絶対追いつきっこないんだと。なぜならばこの「ネクタイという厄介なもので自分の首を締めてるから絶対長生きできないんだ」というのが石原さんの自説でございます。まぁそれが本当かどうか分かりませんけれども、2050年に男性が現在の女性の寿命にやっと追いついた時には、女性の平均寿命が90歳になるっていうんですね。90歳というのはすごい数字でございまして、しかもできるだけ元気で快適に暮らしていける社会を作っていかなければなりません。そのためには、先ほど申し上げたように、最低限のいわゆるナショナルミニマム、シビルミニマムとしての平和あるいは食料そして最低限の資源を確保していくということが、これからますます重要になってまいります。
世界第二番目の経済国家でございますけれども、実はこれ大変すごい数字でございまして、東京都だけを取り出してもですね、東京都という一つの地域のGDPは世界で9番目、スペインと同じだけの経済規模があるわけでございます。そして、どこの県とは言いませんけれども、GDPが日本で47番目、一番下の県であっても世界で76番目、200ヵ国の中の76番目のブルガリアとほぼ同じ経済規模であるわけでございますから、そういう所が集まってやっているわけでありますから、やはり世界の経済の12%を占めているという日本というのは、我々が思っている以上に実は世界に対して、最初からの自力があり、潜在力があるというふうに見られている。また現実そうなんだということを我々はまず思っておかなければいけないということでございます。
これはなにも大国意識を持てとかですね、威張るとかそういうことじゃなくてですね、それ相応のやはり責任と役割、身の丈に合った行動を海外に対しても示し、また発言をしていく必要があるかと思います。
まぁ貿易量は、最近中国がどんどん伸びておりますから、ドイツそしてアメリカ中国に次いで4番目でございますけれども、日本は去年の統計で75兆円輸入をして82兆円輸出をしております。7兆円の貿易黒字があるわけでございますが、このうちこれを重さベースで計算を致しますと、8億トンの物を世界中から輸入をしております。8億トンのうち7億2000万トン、約9割が、さっき言ったような鉱物資源であったり食糧であったり、いわゆる一次産品でございます。8億トン輸入をして輸出しているのが約1,5億トンでございます、自動車とか鉄鋼とか電気製品とかいったものでございます。
つまり8億トン輸入して1億数千万トンしか輸出していないのに、世界で第二番目の外貨準備国であるということは、いかに原材料を世界中から輸入をし、付加価値をつけて輸出をし、外貨を稼いでいるかということの典型的な数字だろうというふうに思っております。そして何よりも、その生きるための、あるいはまた産業として発展させるための材料そのものがないわけでございますから、それを買うための資源としてこの外貨が溜まっていく。つまりその根っこである付加価値をつけていくということが非常に大事だということでございます。
戦後60数年、日本は幸いにして日本は平和で暮らしていくことができました。しかし、テレビやマスコミの情報というのはどうもピンと来ない。まして日本の場合には島国でございますから、触感として、あるいはまた現実の感覚として、なかなか世界での色んな悲惨な出来事等を情報としては知っているわけでありますけれども、危機感としてはなかなかそういうものがない。だからですね、危機に対してのリスクというものに対しての対応が、どうも普段からきちっとした対応ができていない。つまり何かが起きたときに逆にパニックになってしまうということだろうと思います。オイルショック、あるいは14年前のあのコメ不足ショック等々がそうでありました。一つには島国であるということであります。
それから、古今東西の色々な紛争の一つの大きな原因というのは、食料と水の問題であったわけでございますが、この水の国際紛争というものは日本では皆無であります。なぜならば、日本には国際河川がないからです。世界中で国際河川がいっぱいありますし、どこの地域でも国際河川では紛争・戦争に至る場合もありますし、至らなくても、上流の国と下流の国とで色んな対立が起こっている。メコン川、あるいはナイル川、チグリス・ユーフラテス川、先進地域でありますドナウ川も、あそこの水力発電、あるいは原子力発電のための水の戦いというものは非常に強くなっているわけでございます。
そういったように、日本には水ぐらいはある。そしてまた食糧やエネルギーもお金があるんだから買えば良いでしょうということはですね、今までもある意味では非常にデリケートな状況の中でそれが出来たわけでありますけれども、私はきちっとした備え・対応をしておかないと、今後ますます厳しくなる、あるいはひょっとしたらそれがうまく行かなくなるということを我々は常に頭の隅に置いて、日頃から用心をし、万が一の時にはきちっとした対応を国民の皆様と共に、特に政府や政治ができるようにしておかなければならないというふうに考えております。
食料についてはもう皆様すでにご承知だと思います。随分とご理解を進んできているような気がしております。「食糧自給率は世界の中で128番目」であるとか、「世界一の食糧準輸入国」であるとか、そしてその数字が自給率の色んな数字、金額ベース、カロリーベース、純重量ベース、あるいはまた穀物ベース、いずれの数字もどんどん下がってきているという、先進国あるいは世界の中でも稀な、逆に言うと、極めて危険な食糧状況にあるということでございます。
大豆あるいはトウモロコシといった基幹的な作物はほとんど海外から輸入であります。小麦も九十数パーセント輸入であります。まぁ比較的自給率が高いのは、コメが90数パーセントということでございます、魚も50%を超えております。最近の数字としては18%まで落ちました木材の輸入による自給率の低下が、色んな状況の結果として少しずつ国産の生産というものが増えてきておりまして、20%を回復したという数字も出ておりますけれども、やはり最低限外国に過度な依存をしないという施策を我々は採っていきたいと思いますし、これは何よりも消費者の皆様方の認識と理解がなければこれはできないわけでございます。
昔のように、主要な農作物を農家の皆さんが作る、それを政府が値段と量を決めて自動的に買う、そしてそれをメーカーやあるいは皆さん方に売る、つまり、間に国家が入っておりますから、売る方と買う方は全く没交渉になっている。その結果、消費者の皆さんが好む物を作るという意欲に欠けていたわけでございます。それが過大な在庫になったり、あるいはまた消費者に好まれないようなものを作ったり、その結果、「安いんだし、あまり良い国産品もないんだから海外から買ったほうが良いのではないか」という議論が今から10年ぐらい前まではずいぶんとあったわけでございます。これでは生産者も売れなくなる、また売れないようにしなければいけない。買ってもらう人に好まれないような物を作ったら売れないんだということを、これは自由経済が基本でございますからご理解を頂かなければいけない。
他方、あんまり自給率が下がるということは、常に必要な国民の基本的な物資として如何なものであろうかということで、消費者にもぜひ生産サイドに対して要求をぶつけてもらいたい、あるいはまた色々と話し合ってもらいたい。なんと言っても農産物だってお客様は神様なんですから、お客様のニーズなくしては良い物を作れない。逆に言うと、努力して良い物を作れば、やはり顔が見えるとか、安全だとか、あるいは品質が良いとかといったこと、値段は少し高いかもしれないけれども、総合的に判断をして「やはり国産のものが良いよね」というようなプラスの関係になんとか再構築をしていきたいというふうに農政の抜本的な転換。これは、生産者にとっても当然プラスになります。
つまり、消費者の皆さん、あるいはまた小売りをする皆さん方、あるいは作る人達、あるいはまた色々な地域の活動等々も含め、さらには、いわゆる多面的機能として、環境とか水管理とか、あるいは子供の教育の観点からとか、あるいは山村でゆったりしようよとか、色んなところでメリットがありますね。どうぞ都会に住んでいる皆さん方にも、単なる食料の供給、売った買っただけではなくて、広い意味で農山漁村という地域・空間をもっと活用してもらいたいということで、今は生産サイドももっと努力をしなければなりません。そしてまた、現に努力をしている所は良い成果が上がっている所も出てきているわけでございます。
そういう非常に厳しい状況の中であります。世界的に見ても、又日本でもやはり食料生産というのは、これはさっき言ったような農業政策とは別の次元で今非常に厳しくなってきているわけでございます。水の問題があります、気候変動の問題があります。あるいは色々な農薬とかあるいは危険物質の混入問題とか、あるいはそもそも土地が荒れてくるとか、色々な問題があります。
さらには、いわゆる途上国がどんどん経済成長をする、インドとか中国とかいわゆるBRICS、VISTA、ネクスト7といった経済発展をしている国の発展によってエサの消費が増えるとか、あるいは食べるものが穀物からだんだん肉に変わっていくとか、そういった状況もあるわけでございます。
そういう中に、さらに最近はバイオマス・エネルギーというものが、これが石油の高騰にもよりまして、もともとはガソリンの値段の30ドル以下ではバイオマスのサトウキビエタノールが高かったわけでありますけれども、今や60ドル、70ドル、80ドル近くまで去年は行ったということになると、これはもう農産物をエタノールにしたりバイオマス・ディーゼルにしたり、こっちのほうが作ったら儲かるというふうになって参りました。
そうすると今度は食料のほう、本来の食料のほうが減ってくるということになるわけでございます。もちろんバイオですからCO2の固定があります。それから毎年作ることが出来る。化石燃料のように、1回取ったら何億年もまた待つなんていうことはないので、それに比べれば何回でも出来るというメリットがございます。
しかしこれもあまりにも極端な状況になって参りますと、この主なバイオマス原料作物の値段がどんどん上がって参りました。その結果なぜかオレンジジュースの値段が上がってきちゃった。なんでサトウキビを作るとオレンジジュースの値段が上がるんだと。どうもこれはかなり投機的な思惑のようでありまして、実際にサトウキビ畑がオレンジ畑から変わってきたというデータはブラジルでもあんまりないわけでございます。
ここ一日二日はマヨネーズの値段が上がってきちゃったと。これは大豆がバイオマスのほうに行っちゃうので植物油が上がってくる、現に上がってきたんです、植物油の原料そのものが。したがってマヨネーズの製品も高くしなければいけないということになってきたわけでございます。何かあの、オイルショック時の、なんで石油の値段が上がるとトイレットペーパーが無くなるのかという、ちょっと理屈が分からない時がございましたけれども、今やサトウキビが上がるとオレンジジュースが上がる。そのうちに、他にも色んな物が思惑で、事実だけではなくて思惑で上がるということによって不当な利益を得るなんてことはさせないように政府がきちっと監視をする必要がある。我々もきちっと対応をして参ります。
もちろんバイオのメリットというものは確かにあるわけですし、他方世界には8億6000万人の飢餓人口、栄養不足人口がいて、しかもお金を出したくても出せないという人達がいるわけですから、ただ生産サイドだけの理屈で「高く売れればどこに売っても良いよ」というのは、やはりこれは我々もWTOの世界的なメンバーの一つとして、あるいはまた世界に貢献したいと思っております日本としては、それはちょっと行き過ぎではないかということで、食べない植物というものでバイオエネルギーを作っていこうということであります。
最近では、昨日もニュースで言っておりましたけれども、アメリカではスイッチグラスという雑草のなんか身の丈の長いヤツとか、あるいはトウモロコシの茎とか葉っぱ、本当は牛のエサになるんですけれども、まぁ牛さんにはちょっと我慢をして頂いて、人間は食べませんからそっちのほうからセルロースのバイオエタノールを作ろうなんていうところも必要な業務としてやってきているわけでございます。更には日本では1000万トン近く出てくる稲ワラ等も今後利用価値があります。
次に水でございます。言うまでもなく、食料と水というものは密接不可分なものでございます。日本はさっき申し上げた鉱物資源それから食料、これも世界中から輸入しているということは皆様方もよくご存じのことだろうと思っております。実は水も日本は世界一の水輸入国でございます。「ほんとかな」。日本では1700ミリの水が、1年間に雨が降る。世界の平均は850ミリですから世界の倍降る。
日本の周りの排他的経済水域は世界で第6位であります。そして深い所が多いですから、日本海溝とかマリアナ海溝、沖縄海溝みんな日本と関係しているEEZでありますから、この体積で言うと、日本のEEZの中の海水保有量というのは世界で第四番目の実は海洋大国であります。そんな国でなぜ水が不足するんだというふうに私もつい二、三年前まで疑問に思ったところでございます。
しかしよく調べてみますと、まず一人当たりの年間に降ってくる雨の量、さっき申し上げたように、世界平均の倍降っておりますけれども、これ人口換算でいきますと、さっき冒頭申し上げたように、国土がきわめてちっちゃい割に人口が多いということが効いてきておりまして、一人当たりの水保有量は世界平均の3分の1でございます。1年間に我々は約3300トンの水しか天から得ることができない、世界平均は9000トンであります。
因みに、まぁ少し安心なのは、ドイツとかイギリスとかフランスとかイタリアといった国もほぼ3000トン前後でございます。この水も極めて偏在しておりまして、世界でいっぱい水を持っている所、あるいはいっぱい雨が降っている所というのはごく限られておりまして、シベリアとか北欧とかあるいはアマゾン川流域とか、あるいは東南アジアとかそしてカナダといった地域でございまして、それ以外の地域、つまり人口密集地帯というのは大体水が平均以下の先進国ばかりであります。これもアメリカだけは例外でありまして、アメリカも水は大変豊富、平均よりもちょっと多いぐらいの保有量を持っているわけでございます。
先ほど申し上げましたように、水というものは我々にとっては、食料はまぁ一日二日まぁ我慢はできます。あるいはまた、健康のために少し食べないとか減らすということも程々には必要なことなのかもしれません。しかし水はですね、これはどんなに健康なスポーツ人であっても、水だけは補給をしなければならない。一日水を我慢するということは、これはもう心臓に負担はかかるは、血管に負担はかかるは、イライラするはということで、文字通り生死・健康に影響が即出てくるわけでございます。人間の最低限の必要な一日の水の確保量というのは、データを調べると数字はまちまちでありますけど、大体20リットルから50リットル。つまり、食べてそしてまた料理にしたり飲んだりするのに、最低1人10リットルから20リットルぐらいは必要だということだそうでございます。
日本人は、因みに3日で1トンの水を一人頭消費するそうであります。アメリカ人は2日で1トンであります。世界平均が6日で1トンだそうであります。中国は20日で1トンということになるわけでございますが、アフリカ等の本当に厳しい国の人たちは1年間で1トンの水しか確保できない、1年365日で1トンの水ということになるわけでございますので、これは1日2.8リットルしか水が確保できないわけであります。2.8リットルというと、我々なら水かお茶かコーヒーかあるいはみそ汁か何かだけでも一日でそのぐらい飲んじゃうんですね。汗だけでも1.5リットル、何も汗かかないと思っても自然に発汗しますから、ですからそこで3リットルぐらいは飲まなければいけない、それすら確保できないという文字通り生死にかかわる状況の人たちが世界中にいっぱいおられます。食事、シャワー、洗い物、下水はもう無理な数字です。
そして、世界に安全な水が確保できない人たちが11億人いるそうであります。そしてその水によって死んでいく、水が原因でお腹壊したりまた体力が落ちたりして直接的に死んじゃう子供達が年間180万人、5歳以下の子供が大半だそうでありますけれども年間180万人。昨晩、自宅の電卓で計算してみましたが、年間180万人というのは、17秒に1人、世界のどこかで、5歳以下の子供達がまともな水を飲めないために死んでいるという現状があります。これをなんとかしなければなりません。
そして、1日1ドル以下でしか暮らせない人間も11億人いるんだそうであります。他方どんどん人口が増える。昔のマルサスとリカードの論争じゃありませんが、人口が増えるけれども食料や水の生産は少しずつですから、ますますこの問題が大きくなってくるわけです。
そういう中で日本は、先ほど「世界一の水輸入国」というふうに申し上げましたけれども、それはある大学の先生の仮定計算によるものでございまして、穀物を1キロ作るのに2トンの水が要りますと。それから、豚肉を作るのに3トンの穀物が必要です。そうすると6トンの水が必要になります。牛肉を作るのに12キロの穀物が必要になります、そうすると24トンの水がないと1キロの牛肉ができない。
そういう計算で日本の輸入農産物を水換算していきますと、なんと750億トンということになるわけでございます。日本の農産物、農業用に使う水というのは550億トン、残り165億トンが生活用水で135億トンが工業用水で850億トン。そのうちの550億トンで国内食料生産。
他方世界からは、仮想計算でありますけれども、750億トンの水を買っているというか水を奪ったものの農産物を買っているという状況でありますので、これはもう非常に水も日本は世界中から買っておりますし、さっき言ったように、国際紛争とか温暖化とか渇水とか塩害とか、色んな問題で世界で確保できる水はどんどん少なくなってきているわけであります。
地球上の水の97.5%は海水であります。いわゆる淡水というのは2.5%しかありません。その淡水のうち70%は南極の氷でございます。じゃあ、「これが解けてくれたら良いなぁ」と、真水が増えるなぁと思いたいですが、南極の氷は全部解けちゃうと地球上の海水の水位は60メートル上がっちゃうと。60メートル上がっちゃうと、このホテルが生き残るかどうか分かりませんけれども、言うまでもなく世界中がベニス状態になっちゃうわけでございまして、水中に入っていく構築物はいったいどういうことになるのかと。しかも60メートル上がっちゃうと、日本の国土ははるかに小さくなっちゃうという、これ以上はもう議論してもしようがないという大変な危機になってくるわけです。
他方、利用できている水の量は0.01%であります、淡水の。他方、先ほどの海というものを真水に変えるという技術もある意味では非常に重要なのかもしれません。日本の淡水化技術は世界一でございますので、後ほど申し上げますように、今後の日本の方針としてどういうふうにやっていったら良いかということについて、ぜひ水というものも今後ますます少なくなってきているし、世界には汚れた水あるいは下水処理施設がないといった人達で、病気や飢餓で死んでいっている人たちが大勢いるんです。
そして日本もますます温暖化していくと集中豪雨が増えるかもしれないし、また今まで雨が降っていた地域に雨が降らなくなると、今年の冬のあの雪の少なさ、暖冬というものが今後の、今は雪解け水が中心ですけれども、やがて「梅雨がない」なんてことになりますと、とんでもない渇水がこの日本で間もなくやってくるかもしれないということになるわけです。
資源につきまして鉱物資源等についてはもう言うまでもありません。石油・天然ガス・石炭・鉄鉱石といったものは全部97%から100%輸入であります。しかもその輸入している先の国はきわめて限定的であります。大体二、三ヵ国で占められている。石油の90%は中東から入ってきます。そして鉄鉱石はオーストラリアとブラジルで82%、天然ウランについては、カナダとオーストラリアで72%を占めます。更に日本の産業の「ビタミン」と言われているレアメタル、レア・アースのほとんどは何と圧倒的に中国にあります。
先日、総理と経産大臣が色んな所に行って、その中でカザフスタンという世界で2番目のウラン生産国と安定的な日本の消費量の3割近くを確保できるような計画の協定を結んできましたので、これはこれで非常にエネルギー政策として良いと思いますけれども、日本はエネルギー政策を今後も今まで以上にしっかりやっていかなければならないと思っております。
さて、そういった資源と食料と水、これをこういう厳しい状況の中で先人たちは一生懸命苦労して確保して参りました。省エネ・そしてまた技術の発展・環境・文字通り「もったいない」という日本人のこの心を高度な技術力に結びつけてきたわけでございます。しかし、我々はそれを世界レベルでもっともっと貢献をしていかなければならない、そしてビジネスとして生かしていかなければならないわけです。
すでに日本の淡水化技術は世界中でやっておりますし、単に石油の権利を買うだけではなくて、石油も地下から掘ってきたものをただ燃やしちゃうだけじゃもったいないわけですから、これを色んな製品にしていく。それも日本でするんじゃなくて、取れた所、つまり現地でやるということは、現地にとっても文字通り付加価値のつく話でございますからやりたい。それを支援しましょうということを、これからもっと積極的にやっていく必要があると思います。
今日は経済界の皆さんも大勢お見えだと思いますけれども、皆さん方にノウハウや企業力を生かして頂いて、もっと世界の中でビジネスとしてやってもらいたい。本当に困っている後発発展途上国に対しては援助致しますけれども、核兵器を持っている国とか国連の常任理事国になっている国とかに、なぜか日本が税金を差し上げるなんていうのはもうこれは出来ない話でして、しかもそのことを国内であんまり国民に知らせずに、そのままアフリカかなんかへ行ってまたそれを支援してたり武器を輸出しているというような状況というのは、もうそれだけの余裕は日本にはないわけですから、本当の意味で喜ばれるようなことをやっていこうということです。
因みに来年は日本人がブラジルに移民して100周年という年であります。これはもう大変に日本にとって大事な1年になるんだろうと思います。私は去年、農林大臣として初めてブラジルに行って参りました。もう来年のことを非常に期待しております。で、私も移民記念館に行ったり色んな人の話を聞いて、本当に気の毒だなぁと思いました。「今、ブラジルは世界で一番競争力のある農業国家だ」と言っておりますけれども、その礎を作ったのは日本人であります。笠戸丸という船が1908年に、「地上の天国で大規模な農業をやろうよ」と言って行ったんですけれども、行ってみたらジャングルの中に放り込まれて、そして猛獣や色んな病害虫と戦いながら一体どれだけ多くの方が悲惨な状況の中で亡くなっていったかと。
その中の一番厳しいものは農地の開発であり、そしてちょっと前まではアフリカの奴隷がやっていたコーヒーの収穫であります。一粒一粒手で摘んでいた、これが大変厳しい状況であったわけで、一体何万人、何十万人の方が亡くなったかと。それを西村さんという方が自動でコーヒーの実を摘み取る機械を作った。あるいはまた品種改良もした、灌漑設備等の農地造成もした、まさにブラジルが世界一だとするならば、そこまで持っていったのは正に日本人の汗と涙と命だという、このことを我々はもっともっと誇りに思って良い。先人たちの偉業そして苦難を我々はきちっと偲んで、そしてそれを支えに我々も頑張っていかなければならない、そういう大事な年に来年なるんだろうと思っております。
中国のようにお金に飽かせて「武器も売りますよ」、フランスもそうですけども、こんな国に日本はなれません。しかし我々は官民協力して、私は経済産業大臣の時にインドへ経済界の皆さんを初めて連れて参りました。そのあと小泉さんもブラジルへ経済人と行かれ、そしてこの前は安倍さんも中東に経済界の方と行ったんです。もう官民協力して行くのは当たり前なんです。もうそれだけでも不十分です。伊藤先生のような学者の先生方、あるいは学校の先生、場合によっては生徒の代表、ジャーナリストの代表も含めてオールジャパンで行く。そして現地で頑張っている企業やJICA、JETROの皆さん方の話しも良く聞きながら、そして現地で頑張っている日本人学校の先生や生徒さんとも協力をしながら、多面的に我々はソフトパワーでもってそういう国々と仲良くしていく必要があると思います。
企業ももっと頑張ってもらわなければいけません。石油生産に例をとりますと、いわゆるメジャーと言われるトップ3は、日本の1日の生産力とほぼ同じぐらいの石油を1日で取り扱っております。日本はというと、26番目とか27番目にその15分の1ぐらいの数字の取り扱いの会社がズラズラズラッとあるんですね。これではこれからの競争に果たして勝てるのかと。まさしくナショナルプロジェクトであるこれについては、やはりこれは民間企業の判断ですから、「また中川が余計なこと言った」とこうお叱り受けるかもしれませんけれども、しかし、そんな小さなものがあるよりも、やはりこの力を国際的なメインプレイヤーとしてやれるような態勢にしていったほうが私は効率的かつ良い結果が出るのではないかと思っております。
武器輸出三原則、ちょっと話題になっておりますけれども。私はいま議論になっているところとはちょっと別の意味でこれは検討すべきではないかと思います。私が実際やりましたけれども、シンガポール等々マラッカ海峡沖の海賊船対策の船を輸出する時に、「いや三原則に引っ掛かるじゃないか」とかと大騒ぎをしました。
例外として輸出しました。対人地雷、アフガンやカンボジアの対人地雷除去は例外として良いんですけれども、対戦車地雷除去はダメだっていうんですね、この区別がよく分かりません。
また、イラクで最近よく事件になっておりますけれども、携帯電話を利用した起爆装置の爆弾、これなんかもですね、防げるようにする技術は日本の技術をもってすればやれるということで、真に平和構築のための平和貢献のためには、そんなものが今武器輸出禁止の対象になっていること自体が私は時代に合わない、国際的な貢献にならないというふうに思っておりますので、限定的ではありますけれども、きちっと目的を設置した上でこれからやっていくということが必要になろうと思います。
それから物流の効率化、シベリア鉄道なんていうのも、もっとスピードを上げてもっと振動を少なくもっと冬にも強い鉄道を、日本の世界一の技術でやっていく必要もあると思います。
最後に、こういったことをこれからの世代にも頑張ってもらうためには、教育・人材育成が必要であります。今日のお話しをする前に、小学校の教科書の中でどれだけ資源・食料・水について記述してあるかなぁと思って、ペラペラと小・中の教科書を見て参りました。確かに書いてありますけれども、その危機的な状況、それから横の連携というものが極めてサラッと書いてあって、まぁ簡単過ぎるということに気が付きましたので、文部科学大臣宜しくお願い致します(笑い)。ちょうどここにいたので良い陳情ができました。
それから、やはり節約とか食とか、作った人のご苦労というものを感謝しながら使うという気持を醸成することも大事なのではないかと。それから、やはり体験をするということも特に子供達には大事なのではないかというふうに思っております。
「20世紀は戦争の世紀」と言われましたが、植民地戦争が終わって、文字通りそこにある資源とかそれから人的資源とか食料とかを奪い合う一世紀であったと思います。それも限界になって、気が付いてみたら地域紛争と、それから「地球全体がいよいよおかしくなるぞ」という認識をみんなが少しずつ気付くようになってきたわけです。
そういう意味で、日本が先進国やそれから最も公害や非効率な工業活動をしております国々、中国とかインドとか、あるいは東南アジアでも発展していますけれども、そういった環境面、省エネ面でもっと努力をしてもらわなきゃいけない国には、ビジネスとして我々も大いにやりましょうということを進めていきたいと思っております。一昨年の「愛・地球博」担当大臣として一番印象的だったのは、フランス館の中の言葉にこういうものがありました、「地球は先祖からもらったものなんじゃない、子孫からの借りものなんだ、大事に大事に扱って子孫に渡していくことが我々の仕事だ」というのがフランス館の展示の最後の言葉でございました。ご賛同頂きましたならば皆様と一緒にこの仕事にも取り組んでいきたいと思いますので宜しくお願い致します。
ご静聴ありがとうございました。