夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(11月2日掲載)


「守屋前次官は恥を知るべき」
「不可解な『個人情報保護』」
 防衛省の守屋武昌前事務次官に対する証人喚問を見て、国民の方々は怒りを感じ、さらに疑惑を深めたのではないか。
 これは単に、役所の事務方トップによる非常識な癒着では済まされない。現場の自衛隊員たちは、日本の安全を守るために生命をかけて任務を遂行しているのである。彼らが災害出動に汗を流していたとき、イラクやインド洋で危険に直面しながら働いていたとき、守屋氏は何をしていたのか。恥を知るべきだ。
 防衛省には、シビリアンコントロールを背広組(内局)が、制服組(自衛隊)をコントロールするものと勘違いしている向きがある。本来、国民の代表である国会議員(政治家)が軍隊の暴走をチェックするという民主主義国での基本方針だが、このあいまいさが守屋氏を暴走させたのか。
 この機会に、防衛省絡みの疑惑の解明に本気で取り組み、徹底的にウミを出し切るべきだ。接待の背景に何があるのか。犯罪行為があれば摘発すべき。臭いものにフタをするような姿勢を見せれば、自衛隊に対する国民や同盟国の信頼が根底からおかしくなるだろう。
 さて先日、理解しがたい新聞記事を見つけた。
 卒業式と入学式で君が代斉唱の際に起立しなかった教職員の氏名を校長に報告させていた神奈川県教育委員会が、県個人情報保護審査会から「県個人情報保護条例が禁止する思想、信条に関する個人情報の収集に当たる」との是正答申を受け、昨春の卒業式から今春の入学式までの名簿を廃棄する方針を決めたというのだ。
 県教委は「国歌斉唱時に教職員は起立するように」と指導していたといい、起立拒否した教職員らは、思想、信条の自由に名を借りた職務命令違反といえる。これは教職員の評価に直結する事柄であり、その氏名を報告させていたことが、どうして問題なのか。
 個人情報の保護は大切だが、そもそも、公務中の教職員の行動にプライバシーがあり得るのか。こういう形で個人情報を尊重し過ぎると、教育現場での職務命令違反を奨励することにならないか。教職員も審査会、県教委も不可解というしかない。教職員として不的確だから、教員免許更新制がスタートしたら免許取り消しの対象となる。
 この国に、自分の権利だけを主張し、義務を果たさない過度の利己主義(エゴイズム)が蔓延しつつある気がしてならない。