昨年12月にスタートした、自民党「特命委員会水の安全保障研究会」は20回の議論を終え、既述の通り報告書を作成し、その使命を終了しました。
5月に行われたTICAD(アフリカ支援開発会議)への緊急提言、7月の北海道洞爺湖サミットへの提言も行いながら、水を「人の安全保障」ととらえ、世界中の水問題への日本の基本的枠組みを示したものとして自負しています。
本報告書の特長は、①20回の会議、10数回の報告書作成作業を通じ、8省庁、数多くの官僚が同席しましたが、一切発言も会議の運営への関与もなかったこと(させなかった)。②議論が議員と数多くの水の専門家(学界、経済界、NGO、自治体―水の運営、管理者等)によって対等に進められたこと。③報告書作成は、全体の議論をまとめて3人の専門家(学者、NGO関係者)によって見事に行われたことです。
しかし、多くの困難が存在することも明らかになりました。
①タテ割、ヨコ割の弊害(役所だけでなく、学界・ビジネス界にも存在)
②水情報の一元化
③どこに「チーム・水日本」の司令塔(仮称「水の安全保障機構」をどういう形態で設置するか)
④緊急課題(災害対策、国際緊急支援、すでに発生している水のインフラの更新問題等)に対応できるか。
⑤水の管理の複雑さに加え、水の所有権の法的位置付け(既に多くの地下水が内外の経済体により、占有されている。海外では裁判になっているケースも多い)
⑥海外への発信(国際水ビジネス支援、日本の水文化の発信-「治水」はWater Safety managementでは不充分で「Chisui」がふさわしい)
⑦世界水機関「WWO;World Water Organization」の早急な設置等々。
今後、9月の国連総会。洞爺湖サミットの首脳宣言・議長文書をふまえ、来年のイタリア・サミットに向けた水の専門家会合。来年3月の第5回世界水フォーラム(イスタンブール)等、国際的な水の動きも活発だ。
世界で水で苦しんでいる人々は着実に増加している。日本でも気候変動やヒート・アイランド現象で連日水による犠牲者が発生し、渇水・洪水の被害が広がっている。
内外の水危機に「チーム・水・日本」がリーダー・シップをもって緊急、適切に対応していかなければならない。次回の特命委員会は「気象」について勉強・議論して行きたいと思います。