夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(11月29日掲載)


「金融法案を政争の具にするな」
「中小企業倒産など回避へ」
「政治の責任は大きい」
「首相は景気回復に真剣に取り組む」
 旧厚生省事務次官宅が連続して襲撃された事件は衝撃的だった。お亡くなりになった山口剛彦元次官夫妻のご冥福をお祈りするとともに、重傷を負われた吉原健二元次官の妻、靖子さんにはお見舞いを申し上げたい。
 警視庁に出頭してきた46歳無職の男は「昔、保健所にペットを殺され腹が立った」などと供述しているというが、そんな理由で人の命を奪うなど、とても理解できない。捜査当局の一刻も早い真相究明を待ちたい。
 日本はかつて「世界一、安全な国」という誇りがあったが、常識を超える不可解かつ残忍な事件が多発している。私もこういう仕事をしているため、妻に「十分に気をつけてくれ」と伝えた。
 事件の背景として、社会全体を覆う閉塞感などを指摘する識者もいる。ただ、男の語った犯行動機に納得する国民はいないだろう。極めて卑劣で、許しがたい事件であることは間違いない。
 さて、麻生太郎首相は25日、2008年度第2次補正予算案の今国会提出を見送り、来年1月の通常国会への提出を正式表明した。これに反発して、民主党が金融機能強化法改正案などの参院採決に反対している。
 金融法案は、健全だが資産が目減りしている、主に地域金融機関への公的資金を投入可能にするもので、金融危機などで経営が厳しくなっている中小企業向け融資を円滑にする狙いがある。
 現時点で、6兆円規模の緊急信用保証枠を備えた第1次補正予算(成立済み)は順調に機能しているが、中小企業にとって年末や年度末の資金繰りに厳しさが予想されるため、金融法案でさらに肉付けしたい。
 民主党は第2次補正予算案の提出見送りを問題視しているが、まず09年度予算編成を先に整えなければ、予算が年度内に上がらない可能性もあり日本経済にとって良くない。現在精査中の第2次補正予算案は景気後退による税収減などを見極めて、来年早々に国会に提出したい。
 麻生首相の失言がマスコミに面白おかしく取り上げられているが、首相はサービス精神旺盛で明るい性格もあり、誤解される部分がある。ただ、あれほど真剣に日本経済について考え、景気回復に取り組んでいるリーダーはいない。周囲から見ても頭が下がる思いだ。
 このまま金融法案の参院採決ができず、年末や年度末に中小企業の倒産などが発生すれば、政治の責任は免れない。同法案は衆院で野党の意見も聞き、よい部分は取り入れている。日本経済を支える中小企業のために金融法案を政争の具にせず、協力していただきたい。