夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(12月12日掲載)


「助け合いの精神で雇用を守れ」
「吹き荒れるリストラ」
「政府もありとあらゆる対策を取る」
「企業も内部留保の一部を使って」
 米国発の金融危機が波及して、国内企業でリストラの嵐が吹き荒れている。今年初めまで、日本経済を牽引してきた自動車や建設、電機、不動産、流通、金融界などで、急に数百人、数千人単位での人員削減が行われている。これは尋常ではない。年末に向けて最大の社会問題と言ってもよい。
 正社員も削減対象となる中、非正規従業員の置かれた状況はさらに厳しい。厚労省の調査によると、雇用契約が更新されなかったり、契約を途中で打ち切られたりする非正規従業員は10月以降、来年3月までに3万人を上回るという。
 突然、職を失った方々の苦しみは察するに余りある。住む家を失うこともあるという。それが一家の大黒柱であった場合、その衝撃や影響は想像以上だろう。ご家族の方々が抱える不安も大きいはずだ。
 麻生内閣はこうした事態を深刻に受け止め、年末対策、雇用・住宅対策も含め、間もなく緊急雇用対策を発表する。「対策が分かりにくい」「スピード感が遅い」といった御批判をいただいているが、金銭面を含めた、ありとあらゆる支援を幅広くやり抜く決意だ。
 バブル以降、終身雇用制を見直し、人材流動性を高める経営が持てはやされた。ところが、いまは「100年に一度の暴風雨」が吹き荒れている。先日、麻生首相が日本経団連の御手洗会長らに会って雇用の安定を求めた。経営者の方々には企業の社会的責任や社員等の生活について考えてほしい。
 大規模な人員削減を決めた企業の中には、減益ながら多額の利益を確保し、何兆円もの内部留保を持っている企業がある。日本には「和」と「思いやり」と「助け合い」の精神がある。非常事態だからこそ、内部留保の一部を使ってでも、雇用を守るという道も考えていただきたい。
 さて、今週初め、報道各社の世論調査で麻生内閣の支持率が20%台前半まで下落した。この結果は重く受け止めたい。自民党内からも批判が出ているようだが、党内で小競り合いをしている場合ではない。
 麻生首相は日本経済について真剣に考え、生活・雇用、景気回復に全力で取り組んでいる。私はいい政策ならば、野党の意見でも取り入れる決意を持っている。本当に苦しんでいる人や地域、企業を助け、日本を再び元気にするため、私も閣僚として力の限り、雇用政策や経済・金融政策に邁進したいと考えている。