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【講演】「台湾の農業・水vol.2」〈終〉(2008年8月4日)

台湾の農業・水vol.1」(2008年8月4日)の続き

◆水の重要性
ご承知のように水は必要不可欠な資源ですが、世界中に偏在しています。
豊かなところと全然ないところがある。
世界的に言えば、豊かなのは言うまでもなくカナダ、あるいはロシア、北欧、アジアのモンスーン地帯、日本や台湾もそういう意味では総体としては豊かなほうに入るんだろうと思います。それから、南米アマゾンです。
それ以外の国々、インドを中心としたアジア、中東、アフリカ、ここはもうたいへんな水危機です。

しかも温暖化による気候変動で、降るところはどんどん降る、降らないところはますます降らないという状況になってまいります。

世界の平均気温は100年で1度上がったと言われていますが、台湾の暖かい気候が日本の九州になり、九州の気候が今までの日本の米所だった地域がに移り、私の地元である北海道が日本一の米所である新潟あたりの気候になりつつある。
北海道のコメのことを考えればいい話のようにも思えるんですが、トータルとしては、決していい話ではない、と私は思っております。

もう1つ、温暖化になれば、たった3%しかない地球上の真水の約半分を占める地球上の氷が溶けてまいります。
ヒマラヤの氷がどんどん溶けていくと、やがてこれは大洪水、そしてやがては加水になってまいります。
今、北極海の氷が溶けた場合の資源問題が非常に大きな話題になっておりますが、この問題は、直接的には日本と台湾は関係ないわけであります。
しかし、北極の氷が溶けて通年的にあそこが航行できるようになると世界の物流が変わってくると私は思っているわけであります。

危険と言われるバシー海峡、あるいはマラッカ海峡、ホルムズ海峡、スエズ運河を通っていた世界の物流が、距離的にも半分から3分の1になる。
ロシア沖の北極航路が可能になれば、世界の物流というのは大きく変わってくることもわれわれは視野に置いておかなければいけないと思っております。

◆台湾の水問題 台湾の水問題をいろいろ調べてみますと、上水はかなり普及しているようですが、下水の普及率がかなり低いと聞いております
台湾は気候的に暑く、湿気が多い地域ですから、ウイルスや細菌等々の発生を抑えるためにも、下水道の普及は急務だろうと考えております。もちろん、日本とは隣国ですし、交流も深いわけで、日本にとっても衛生問題になりうる、日本も無視できない問題だろうと思っていますので、今度、台湾に行ったときは、台湾の指導部の皆様方に、台湾の水問題、特に下水道問題の改善というものをお願いしたいと思っております。

◆台湾の農業事情
台湾の農業事情は、やはり日本と非常によく似ているなと感じています。

日本のカロリーベースの自給率は40%程度ですが、台湾はさらに低い36%。
台湾も日本もお金持ちで元気のいい時代は食糧を世界から買えばいいじゃないか、という考えもあったかもしれませんが、世界の人口がここまで増える一方、気候変動でどんどん農地が減っている今は、人口の増加に食糧供給が追いつかない。

アメリカやブラジル等はいわゆるバイオエネルギーに貴重なえさや人間の食糧をどんどん回している。

こういった状況を考えますと、今後、われわれのような自給率の低い国は、どうやって自分のところで食糧を確保していくか、が非常に大事なポイントになってくるんだろうと思っています。
そして、食糧がなくても買えない国々に対しての貢献も今後ますます重要になってくるとも考えております。

◆エネルギーの備蓄
エネルギー関係ですが、2005年現在、台湾の1次エネルギーの供給量が1億500万トン、1人当たりの1次エネルギーの供給量が石油換算で1人当たり4.62トンであります。
台湾のエネルギー自給率は12%で、これは日本が4%よりも高いわけですが、これは安全な数字ではないと思います。
それから、CO2の排出量が2億6,000万トン。日本はその5倍の13億トン。
1人当たりのCO2排出量、台湾では1人が1年間に11.4トン、日本もだいたい10トンですから、ほぼ同じということであります。

さて、ぎりぎり事態に陥った時に利いてくるのは備蓄です。
日本は二度のオイルショック時につらい経験をしていますので、官民合わせて約160日以上の石油の備蓄を持っております。
台湾も60日以上の備蓄をお持ちと聞いております。

今、日本で私が進めようと、進めなければいけないと思っているのは、石油だけではなくて、資源そのもの、自然全般の備蓄、とりわけレアメタルです。

レアメタルの備蓄を日本は、今までも一応やっていますが、それを長期的な視野に立って行っていかなければなりません。
レアメタルは原子番号で言うと30数種類あるわけですが、どれもが産業のビタミンであり、あるいは軍事物資の非常に重要なポイントでもあるわけです。
これを安定的に確保していくということが非常に重要であります。

供給先の確保の大事ですが、と同時に製品として使ったもののどうやってリサイクルするか、その方法をきっちりとつくり上げなければなりません。
携帯電話からイリジウムなどもう一度、回収するなど日本でも熱心にやっていますが、、私が今、注目をし、実現したいと考えているのは、下水道の中に眠っているレアメタルの活用です。
下水道には、レアメタルが非常にいっぱいあるそうです。われわれはそれを黙って汚水の一部として処理してきましたが、下水の中にあるレアメタルをできるだけ確保するにはどうすればいいか。日本も台湾といっしょで上下水道局は自治体がやっておりますので、今、官民挙げて、その行動を今、起こしつつあります。

◆リンの話
レアメタルの話とはずれますが、レアで、そして極めて重要なのがリンです。
農業生産に必要な植物の三大要素である、窒素、リン酸、カリのうちリンを日本はほとんど輸入に頼っています。
たぶん台湾もそうだと思いますが、10年前に最大の供給先であったアメリカがリンの輸出を禁止いたしました。
われわれは非常に大きなダメージを受けていますが、アメリカに続くリンの供給国である中国も最近その輸出をストップいたしました。

リンがないと植物、農作物ができませんから、われわれはこのリンについても何とかしなければなりません。そして、このリンもわ、やはり下水道の中に大量に混ざっていて、今は、捨てられているわけであります。下水道の中からリンを取り戻そうという努力も一層必要になってくると考えています。

◆まとめ
いずれにしましても、食糧、エネルギー資源、あるいは製品になるための材料資源、そして水というのは、密接に関係しています。

食糧を作るためにはエネルギーが必要であり、農産物1単位カロリーを作るのに、化石エネルギー10のカロリーが必要であります。
あるいはまた穀物1キロ作るのに2,000倍、つまり2トンの水が必要であります。
牛肉に至っては、穀物1キロを作るのに2万2,000倍、つまり22トンの水が必要であります。

食糧、そしてエネルギー、資源、水は密接に関連しているにもかかわらず、台湾と日本にとってはいずれも決して豊かなものは何1つないという状況であることをしっかり認識しなければなりません。

例えば中国は、硫化水銀か何かを雲の中に打ち込んで雨を降らせようとするなど、天候を人為的に変化させようということを盛んにやっています。台風の進路を無理やり変えようとする実験をしている。

現時点では荒唐無稽、若干滑稽な試みではありますが、それが万が一、技術が確立されたとき、この東アジアの気象が中国にコントロールされることになってしまう。
われわれにとっては水資源として極めて重要である雨すらも中国が握ることになる。
そんなことがあってはならないと思います。
今日は、台湾の軍事に従事される皆さんに、軍事以外のお話をさせていただきました。
日本と台湾には食糧、水、エネルギー、資源などでいろいろな意味での共通項があり、そしてまた目指す方向は民主主義、自由、そして経済の発展、と想いを一緒にできると感じております。

価値観が共有できる一番近い国である台湾と、共通の目標実現のために、今後も取り組んでいきたいし、ご協力をお願いしたいと思っております。
以上で話を終わります。ありがとうございました。

(終わり)