【講演】「台湾の農業・水vol.1」(2008年8月4日)

◆はじめに

台湾の安全保障、並びに軍部の皆様方、ようこそ東京へ。

私がこういう機会を与えていただきましたことを心から厚く御礼を申し上げます。1日、安全保障を中心とした日台の議論をされているわけでございます。きょうは政府、あるいは外交、安全保障の専門家の皆さんとの対話が行われたと聞いております。

私は経済、あるいはエネルギー担当の大臣、それから食糧担当の大臣をやっております。これらの分野は日本も台湾も、非常に脆弱だという危機感を持っております。

実は日本はもっと基礎的、あるいは重要なこととも言える「水」という問題がたいへん脆弱だということを私は数年前から研究をしております。自民党でも正式な対策本部を作って、私がそこの責任者になりまして取り組んでいるところでございます。

調べてみますと、台湾も水問題、水についてもたいへん脆弱だということを発見いたしました。
軍事的な問題が皆様方のお仕事であると思いますが、そのバックボーンである国民、あるいは皆様方の万が一のときの活動の必要不可欠な物資でありますエネルギー、資源、食糧、そして水、こういった問題も、日本の自衛官の皆さんと、制服の皆さんとお話をしていても、残念ながらあまり危機意識がない、というのが実情です。

今、一生懸命、自衛官の皆さんにも私の考え方をお示ししているわけでございます。

そういう意味で、きょうはちょっと見方が少しずれますかもしれませんが、私にとっては日本の、あるいは台湾の安全保障上、極めて重要である食糧、資源、エネルギー、それから水、あるいは気候温暖化など、こういった問題につきましてお話をさせて頂きたいと思っております。

◆民主主義の厳しさ
さて、今、日本や台湾を含めて世界の各国、先進国であろうが、アフリカのLDCの国々であろうが、世界がすべての国々が直面している問題として、食糧不足、エネルギー不足、温暖化、水問題、アメリカ発の金融危機をきっかけとした経済の非常に不透明などがあげられます。

日本も台湾も民主主義国家ですから、“国民の怒り”がわれわれ政治の世界にすぐ入ってくる。
私は世界の主な国々が1つのグループとしてまとめることができるのではないかと思っております。それは『G20』という括りであります。アメリカ、日本、韓国、フランス、イギリス、そして台湾も、たぶんそれに近いグループに入れてもいいんだろうと思います。
この「G20」とは、国民の支持率がほとんど20%、30%台だという民主主義の厳しい状況にわれわれが置かれているという状況をいいます。
政府、あるいはわれわれの党に対しての支持率がやはり20%、30%台というのは非常に厳しいわけでございまして、だから国民の怒りに何とかこたえていかなければなりません。
新しい政権がスタートした台湾、韓国、フランスといった国々も、低い支持率の中でどうやって政治を行っていくかというのは、たいへん厳しい民主主義の必然だろうというふうに思っております。

今日この場で尖閣の話をするつもりは毛頭ありませんが、尖閣についてもおそらく台湾側は国民の人たちの怒りを考えて、馬英九総統閣下、あるいは与党がいろいろな行動をするかもしれない、それに対しわれわれは冷静に対応しなければならないというふうに思っております。

◆対中国問題
そして、台湾と日本にとっての特別の問題が言うまでもなく「中国問題」であります。
これは軍事的問題だけではなく、経済的問題、あるいは水・環境問題についてもわれわれは非常に影響を被っております。
ご承知かどうかわかりませんが、日本では今年の1月の終わりに、中国で作られた餃子に毒が入っていたという事件がありました。意図的に入れたものではないかという容疑をかけて今調べているわけでありますが、中国側の反応は何もございません。

日本には「人のうわさは75日で忘れられるんだ」ということわざがあります。このショッキングな事件も数か月間報道されないと一般には忘れられてしまうかもしれませんが、国民の安全・安心を大きく脅かしたこの事件をわれわれ政治家は断じて忘れてはいけない、と考えています。
そして私自身はこの毒餃子事件が氷山の一角だと思っておりますので、中国側においてきちっと真相解明をしていかなければならないということをわれわれ強く要求し続けていかなければならないというふうに思っております。

また、中国の環境汚染、あるいはまた水の問題は日本と台湾に大きく影響を与えているわけであります。

例えば三峡ダムを作ったことによる気候変動や水の流れの変化もそうですし、また、北京を始めとする中国北部の水不足対策のために、大きな河川を3つ作って水が豊かな南部から水を運ぼうという計画もあるようですが、これも非常に無理があるわけでございます。
こうした中国の行動による影響をわれわれは空、海からそしてまた作られた食品等の製品によって影響を受けるわけです。
このことは非軍事的な中国の脅威であるというふうに私は考え、何としてもこれを阻止していかなければならないと考えております。

しかし、これは日本だけでやっても限界がありますし、台湾だけでやっても限界があると思います。

この問題は韓国、台湾、日本、AESEAN、インド、そしてロシアといった国々が一緒に取り組むべき問題です。非軍事的なことから、各国が一つになって強いプレッシャーを向こう側にかけていけるだろうし、いかなければならないと私は思っております。

◆日本と台湾の水事情
さて、私が作った資料で恐縮ですが、まず1枚目には台湾と日本の主な代表的な数字の比較であります。
水の数字を見る前に注目したいのは国防費です。
台湾がGDP2%。これを馬英九総統は3%にするという話を伺っております。ぜひ台湾の安全保障のために適切な安全保障体制を構築していただきたいと思いますし、また日本もその努力をしていかなければいけないと思っております。

それから資料の下のほうですが、世界の平均降水量が880ミリ。
日本も、特に台湾は非常に多いと言える数字です。したがって、水ぐらいは豊富だろうと思っている国民が日本にも台湾にも多いと思うのですが、決してそんなことはありません。
日本では世界の1人当たり水保有量の3分の1しか日本はありません。
中国は4分の1であります。
たぶん台湾も、人間がコントロールできる量という観点で1人頭の保有量というデータを出すと、決して高くないだろうと思っております。
台湾も雨季と乾季の差が非常に大きい。例えば雨季のシーズン、4月、5月ぐらいから台風シーズン、8月、9月ぐらいまでの間に降水の8割が降るわけであります。逆にそれ以外の半年間は雨が降らない。そして北部と南部で降る量がかなり違う。
台湾南部は気候的には非常に食糧生産に適していますが、北部に比べて水が足りないという問題もあるわけであります。

昔、後藤新平という人が台湾の衛生問題の向上にずいぶん貢献をいたしましたが、衛生問題とは、その大半はある意味ではきれいな水の確保の問題であります。
暖かい土地で汚い水を放置していると、マラリア等々の疫病が発生なったり、あるいは多くの人々がお腹を壊して死んでしまいます。
今の世界でも、180万人の5歳以下の子どもたちが水が原因で亡くなっています。5秒に1人です。

きれいな水が確保されていない人たちは世界に11億人います。
下水がきちっと完備していない、つまり不衛生な水に接している人たちが世界で26億人、約4割近い人がそういう状況にあって、これがますます増えていく。

つまりこの水の問題とは、われわれにとって世界的な課題であるんです。

結論的に言うと、台湾は非常に高い技術を持っておりますから、例えば国交のある中南米やアフリカの国々に対し、水で貢献できるのではないかと、水の技術、水の産業、そして場合によっては、緊急事態であれば、日本の自衛隊と同じように台湾の軍の皆様方が貢献できるのではないか、と私は期待をしてしるわけであります。
(つづく)