夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(8月24日掲載)


「国際的に高く評価される安倍外交」
「経済ミッションの同行、今後はオールジャパンで行くべき」
「内閣改造、党は全力で支える」
 われわれは参院選での厳しい結果など、国内的には反省点が多々あるが安倍晋三首相の戦略的外交は国際的に高く評価されている。昨年9月の就任直後の訪中、訪韓をはじめ、中国の温家宝首相の来日、今春の日米首脳会談など、世界における日本のポジションは確実に上がっている。
 今年6月のハイリゲンダム・サミットでは、地球温暖化ガス削減をめぐって対立したフランスのサルコジ大統領と米国のブッシュ大統領の間を仲介し、排出量半減を検討することで合意にこぎつけた。
 現在、首相はインドネシアとインド、マレーシアの3カ国を歴訪しているが、アジア地域で「自由と民主主義」という同じ価値観を共有する国々との関係をより深めることは意味があることだ。
 インドネシアは人口2億数千万人、石油や鉱業資源に恵まれた国で、マレーシアは急速な工業化に成功した国。ともにASEAN(東南アジア諸国連合)の主要国で日本との経済関係も深い。両国が接するマラッカ海峡は太平洋とインド洋を結ぶ主要航路で日本船舶も数多く通過している。
 インドは人口10億人を超える大国で、IT国家としても有名。これから、中国を抜いて最も発展する国とみられている。3カ国とも日本にとって極めて重要な国であり、いずれも「親日国」である。
 3カ国歴訪には日本経団連の御手洗冨士夫会長を団長とする経済ミッション約250人が同行している。首相や閣僚の海外出張に経済ミッションが同行するのは、私が経産相時代の4年前、インドを訪問したときが最初だ。その後、小泉純一郎首相のブラジル訪問時にも同行し、大成功を収めて恒例化している。
 今後、財界の大物だけでなく、若い人々も参加すべきだ。学界や文化界、マスコミ界の指導的立場の人、女性や子供なども加わり、オールジャパンで行くべきだと思う。
 「百聞は一見にしかず」「百考は一行にしかず」という言葉があるが、トップ同士だけでなく、各界のリーダーや草の根まで含めた重層的な交流は、両国の友好信頼関係に非常にプラスになる。同行することが目的ではなく、スタートなのである。
 9月にはAPEC(アジア太平洋経済協力会議)があり、首相は環境やテロ対策でリーダーシップを発揮するはずだ。自由と民主主義への脅威、許し難いテロ、日本や友好国などを飲み込もうとする勢力とは断固戦っていかなければならない。私の元にも、3カ国歴訪の大きな成果が伝わってきているが、日本にとって戦略的に素晴らしい時期の訪問だといえる。
 さて、秋の臨時国会は、テロ特措法の延長問題など、国民や国家にとって重要な審議がある。参院で多数を失った自民党は丁寧に進める。来週には内閣改造・党役員人事が行われる。首相が重責を担うために敷くベストの布陣を、党は全力を挙げて支えていく。