夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(9月7日掲載)


「臨時国会では対立より譲歩を」
「人間力の違い感じた瀬島龍三さん」 
旧大本営陸軍部参謀で、戦後は臨時行政調査会(臨調)や、臨時行政改革推進審議会(行革審)などの委員を歴任した、元伊藤忠商事会長、瀬島龍三さんが4日、お亡くなりになった。
 瀬島さんは、国鉄改革に取り組んでいた父が敬愛していた方で、いつも父は「凄い人物がいる」と話していた。私が23年前に初当選した直後に声をかけていただき、それ以降、永田町のキャピトル東急ホテルにあった個人事務所などで何度かお話をうかがった。
 当時、すでに70歳を超えられていたが、眼光鋭く、記憶力抜群、緻密で理路整然と話される方だった。人間力の違いも感じた。「旧陸軍の高級参謀とはこういう雰囲気なのか」と感心させられたものだ。
 現在でも優秀な人材はいるが、瀬島さんのように1日1日が国家存亡の危機という意識の中で軍隊を指揮し、11年間も極寒のシベリアに抑留され、帰国後、財界に転じて日本経済の発展に寄与、さらに中曽根康弘元首相のブレーンとして行政改革に尽力したという方はなかなかいない。
 私は中曽根元首相をはじめ、英国のサッチャー元首相やフランスのシラク元大統領、ロシアのゴルバチョフ元大統領、台湾の李登輝元総統など、大国のリーダーとして活躍された方々、またリーダーを支えた方々から直接お話をうかがうよう努力している。
 瀬島さんにはもっとお目にかかりたかった。非常に残念だ。心よりご冥福をお祈りしたい。
 さて、先月27日に安倍改造内閣がスタートした。閣僚名簿を見たとき、私は「実務者内閣」という印象を持った。ただ、直後に遠藤武彦前農水相が辞任した件については、再び国民にお詫びをしなければならない。与党議員として真摯に批判を受け止めたい。
 臨時国会では野党陣営が対立姿勢を露わにしてくるようだが、日本はいまだにデフレから脱却していないし、個人消費もパッとしない。米国でのサブプライムローンの焦げ付き問題は、世界の金融や経済に大きな影響を与えかねず、日本経済も重大な局面を迎えている。
 国全体が厳しいときだからこそ、与野党は対立だけでなく対話も行い、お互い譲歩しながら難局を乗り切るべきではないか。このままでは「日本の格付け」はどんどん下がる。永田町の局地戦で勝てても、日本という国自体がおかしくなりかねない。わが党も反省すべきは反省する。野党もよくよく考えてほしい。