夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(2月15日掲載)


「中国食品の輸入をストップせよ」
「安全が再確認されれば再開すればいい」
「国内生産、備蓄を重視すべき」
 中国産の冷凍餃子を食べた日本の消費者多数がひどい中毒症状に陥り、餃子やパッケージから有機リン系農薬「メタミドホス」や「ジクロルボス」が検出された事件は、わが国の「食の安全」を脅かす重大かつ深刻な問題だ。
 これまでの捜査状況などから、農薬は中国国内で混入された可能性が極めて高くなっている。一刻も早く、日中両国が協力して全容を解明し、犯罪であるならば犯人を捕まえて厳正に処罰してほしい。
 私は農水相時代、輸入食品の安全性について調べさせたことがある。中国産以外にも安全性に疑問がある輸入食品はあったが、今回は人命にかかわりかねない危険な農薬が故意に混入されたと疑われる重大事案であり、これまでとは次元が違う。
 中国国内で冷凍餃子を製造した「天洋食品」が一流工場と呼ばれている以上、中国食品の安全が再確認・再構築されるまでは、中国からの食品輸入をいったん全面ストップして対応すべきではないか。
 現在、世界中の人々が中国の食品や水などに不安を持っている。今年4月には胡錦涛国家主席が来日し、8月には北京五輪が催される。だからこそ、ここで徹底的に安全性を確認すべきだ。安全性が確認できた食品については、個別に輸入を再開すればいい。
 私は中長期的に考えて、それが日本の消費者のためにも、中国食品のためにも、重要な日中関係のためにも一番いいと考えている。「急がば回れ」だ。
 日本の食糧自給率についても考えてみたい。コストや利便性を優先したため、わが国の食卓には多くの輸入食品が上り、自給率は4割を下回っているが、今回の事件でこの問題が再認識された。
 世界の食糧事情や地球環境の変化を見る限り、日本がいつまでも安定して食糧を輸入できる保証はどこにもない。安全保障の観点からも、食糧の国内生産を重視し、食糧備蓄に力を入れるべきだろう。
 イギリスでは地球環境への負荷を考え、スーパーなどで売られる食品には値段とともに生産地からどれだけの距離を輸送されてきたかを示す「フード・マイル」が表記されている。環境保全の観点からも、食糧の国内生産について見直すべきではないか。
 今週初め、わが家では妻と息子が自家製の餃子を作ってくれた。とてもおいしく、楽しい夕食だった。私も子供のころ、母とともに餃子を作ったことを覚えている。家族で食事を作り、一緒に食べる。「食育」の面からも、家で餃子を作るというのは素晴らしいことではないか。
 ともかく、餃子は日本人にとってなじみのある食材だけに、今回の事件は「日本人の食」について考える、きっかけとなった。