夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(2月1日掲載)


「今こそサラリーマンの給与を上げるべき」
「中小企業や個人の大型減税を-緊急経済対策を打ち出せ」
「政府系投資ファンドも検討せよ」
「真に必要な道路を造る-国民共通、与野党共通の認識」
 揮発油(ガソリン)税の暫定税率維持をめぐり、今週、国会が混乱した。「衆参ねじれ」が大きな原因だが、政府自民党が掲げる「無駄な道路は造らない。納税者の理解を得て、真に必要な道路を整備する」というのは国民共通、与野党共通の認識ではないだろうか。
 民主党は「暫定税率を廃止してガソリンを25円値下げするが、必要な道路は造る」などと夢のような主張をしているが、暫定税率が廃止されれば2兆6000億円もの歳入欠陥が発生する。
 道路財源は道路整備だけでなく、道路や橋の維持補修、除雪や雪崩予防対策、安全や環境対策にも活用され、国民の生活を守っている。都市部でも、渋滞解消や開かずの踏切対策などに、こうした財源は不可欠。地方自治体の医療や福祉、教育などにも悪影響が出るのは避けられないのだ。
 さらに、暫定税率維持が含まれる租税特別措置法改正案には中小企業への特例的な減税措置も入っているうえ、一括処理される関税関連法案には、牛肉やチーズ、麦芽など輸入品約420品目の軽減税率もある。これらが失効すれば税率が一気に上がりかねない。
 以前、新テロ特措法に関して指摘したが、インド洋での給油活動が中断したことで日本の国際的格付けは低下した。このまま国会混乱が続けば、世界経済が不安定なときに日本経済に不測の事態が起きかねない。
 米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題は今後、世界中に拡大していくとみられる。各国が経済悪化から敏感になり、小さな衝突もあるだろう。最悪、世界恐慌という事態も考えられる。
 すでに、米国は個人と企業向けの減税を柱とする1500億ドル(約16兆円)程度の緊急経済対策を発表した。
 私は、日本の活力を取り戻すために、いまこそ総合的な緊急経済対策を打ち出すべきだと考えている。中小企業減税や投資減税、個人減税、人材育成減税といった大型減税を行うだけでなく、GDP(国内総生産)の6割を占める個人消費を刺激するためサラリーマンの給与を上げるべきだ。
 2000年に比べて、株式配当は2倍、役員報酬は3倍に上がっているのに、給与が下がっているのはおかしい。正規社員を減らし、給与の低いパートや派遣社員といった非正規社員を増やす傾向が続けば、日本社会から活力が失われかねない。
 そして、わが国の1500兆円という個人金融資産の活性化するため、日本版の政府系投資ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド=SWF)創設についても検討すべきだろう。
 ともかく、「ガソリン25円値下げ」などと矮小化された議論ではなく、日本経済を抜本的に浮上させる対策について話し合うべきだ。民主党が本当に政権政党を目指すつもりなら、国会の局地戦ばかりに熱くならないで、ぜひ、世界的視野を持ってほしい。