夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(3月14日掲載)


「海賊 シー・シェパードに怒り」
「正当防衛である実力行使 排除しない」
「人権擁護法案 断固阻止」
 南極海を航行中だった日本の調査捕鯨船団の母船「日新丸」が、米環境保護団体シー・シェパードから薬品入りの瓶などを投げ込まれた事件について言いたい。
 国連海洋法条約を確かめるまでもなく、あれは違法な海賊行為である。日本人3人が負傷しており、世界の常識として母船に同乗していた海上保安官は警告弾だけでなく、適切な武器を使って対応すべきである。
 ただ、わが国の現行法制度の中では、民間船の中では海上警察権を行使できないという。公海上で活動する船舶の安全確保のため、日本人の生命と安全を守るため、早急な法整備が必要といえる。
 私がテレビの報道番組で「(抗議船を)威嚇なり撃沈するなりしてでも、(日本人乗員を)助けるべきだ」と語ったことが注目されたが、海賊行為への抑止力として、正当防衛である実力行使は排除するものではない。
 そもそも、日本の調査捕鯨は、国際捕鯨取締条約でも認められた正当な活動である。私が農水相だった1998年にも環境保護団体による妨害行為があったが、彼らの手口はどんどん凶悪化している。
 かつて、シー・シェパードはアイスランドの捕鯨船を爆破したこともある。卑劣なテロリストと変わらず、英国は船籍をはく奪した。どうして、オーストラリアは彼らの寄港を許し、まるで英雄扱いしているのか。日本人よりクジラを大切に考えているのだとすれば極めて残念だ。
 さて、人権擁護法案に反対する国民集会が10日、国会の憲政記念館で開かれた。私や島村宜伸元農水相、平沼赳夫元経産相、古屋圭司衆院議員などの国会議員も多数参加したが、500人を超える人々が会場に入りきれないほど集まってくれた。心から感謝している。
 この法案は、法務省の外局に人権侵害の被害救済を目的とする人権委員会を設置するもの。人権侵害の定義があいまいなうえ、警察や検察抜きで家宅捜索を行えるなど同委員会に強大な権限を与えており、政治家や学者、マスコミ、そして何よりも一般国民の言論活動が制限される恐れがある。
 私の元には、毎日メールなどでさまざまな意見が寄せられるが、同法案については「人権擁護でなく人権侵害法案」「漫画やアニメなどの自由な表現も規制される」といった反対意見ばかりで、なぜか賛成意見は1件もない。他の問題では、賛成と反対双方のメールが激しく来るのに…。
 こうした中で、法案提出が検討されていることに不気味さすら感じる。
 「平成の治安維持法」とも言える同法案を断固阻止することが、次世代への重大な責務として活動していく。