夕刊フジ連載コラム「中川昭一の言わせてもらおう」(2月29日掲載)


「イージス艦衝突事故 防衛省は誠実に説明を」
「国民の信頼なくして、国家の安全は守れない」
「韓国の李大統領就任に祝意」
「日韓関係の未来に期待」
 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船の衝突事故が発生して10日になる。私の地元・北海道にも漁港があり、漁業関係者の方々から怒りの声が伝わってきている。帰りを待つご家族のためにも、一刻も早く、行方不明の親子2人が発見されることをお祈りしたい。
 こういう事故が起きたとき、まず全力を尽くすべきは被害者救出とともに事実解明だ。すでにイージス艦が事故直前まで自動操舵だったことが問題視されているが、防衛省としては誠実かつ迅速に「何があったのか」を説明するべきだろう。
 私が危惧するのは、安全保障を担う防衛省の信頼が失われること。国民の信頼なくして、国家の安全を守ることなどできない。今回は任務中の事故で一般国民に被害を与えただけに、石破茂防衛相もその重い責任を感じて対応にあたっている。
 野党陣営からは「石破大臣は即刻辞任すべき」という意見も聞かれるが、現時点で辞任することは、事実解明とそれを受けた再発防止という本質論からズレる気がする。国会の戦術論だけで騒ぐべきではない。
 さて、米大統領選が過熱している。特に、民主党はオバマ上院議員とクリントン上院議員が歴史的大接戦を演じている。2人の個性的なキャラクターも手伝って、日本の新聞やテレビも連日取り上げている。
 ただ、2人は同盟国である日本については多くを語っていない。日米関係はそれほど未熟ではないと信じるが、米国の政策転換は日本にも大きな影響を与える。大統領候補の発言や思考には注目せざるを得ない。
 これに対し、共和党候補の座をほぼ手中にしたマケイン上院議員はベトナム戦争の経験などから、日本や日米同盟にも強い関心を持っているという。日米関係が極めて良好だった小泉ーブッシュ時代の外交スタッフの多くも「マケイン支持」らしい。
 25日に就任式を行った韓国の李明博大統領には、心からお祝いを申し上げたい。福田康夫首相との首脳会談もシャトル外交の再開で合意するなど、未来志向の会談だったようだ。
 私が経産相だった4年前、日韓自由貿易協定(FTA)締結交渉が突然中断された。盧武鉉前大統領時代は動かなかったが、李大統領は新任の外交通商相に前駐日大使の柳明桓氏を指名した。私も柳氏は個人的によく知っている。日韓関係が本来の重要な関係になるよう期待したい。