衆議院本会議での代表質問(1月29日)


私は、自由民主党を代表して、安倍総理の施政方針演説に対し、質問をさせていただきます。
 総理は、最初の国会において、美しい国づくりを高らかに宣言されました。国の骨格をなすものは、憲法、安全保障、教育であります。総理は、最初の国会で、教育の憲法とも言える教育基本法の改正をなし遂げ、また、安全保障のかなめとなる防衛省を実現しました。このことは、美しい国づくりの礎を築く大きな第一歩でありました。
 平成十九年度予算案もまた、時代の節目を画するものとして高い評価が得られるものと確信しております。
 新しい年を迎え、我々は、美しい国づくりの具体的な方策を明示しながら、さらに大きな一歩を踏み出さなければなりません。
 私は、前段で国の骨格にかかわる政策について、後段では「日本経済の進路と戦略」に沿った具体個別的な政策について、総理にお伺いいたします。
 まず最初に、憲法改正についてお伺いいたします。
 今国会では、衆参両院に憲法調査特別委員会が設置されました。憲法改正手続法案は、一刻も早い成立が望まれます。法案成立後、衆参両院に設置される憲法審査会では、あるべき憲法の姿について十分な審議が尽くされるものと考えます。
 総理は、年頭の記者会見において、私の内閣で憲法改正を目指したいということは、当然、参議院選挙でも訴えていきたいと述べられております。具体的に、現行憲法のどこをどのように改正し、よりよい憲法としようとお考えなのか、総理の御所見をお伺いいたします。
 次に、外交についてお伺いします。
 安倍総理は、就任早々、中国、韓国を電撃的に訪問し、一部に言われていたアジア外交への懸念を見事に払拭いたしました。また、そのさなかに発表された北朝鮮の核実験実施に対し、総理の強いリーダーシップのもと、我が国は、国連安保理決議の全会一致での採択に主導的な役割を果たすことができました。
 総理はまた、新年早々にはヨーロッパ諸国を歴訪いたしました。これらの訪問先の選定には、総理が言う主張する外交が反映されたものと思います。民主主義、基本的人権、市場経済、法の支配といった普遍的価値を共有する米国、豪州、インド、英国、フランス、ドイツ等の欧州各国などと手を携えていこうとする総理の方針には、全面的に賛成であります。総理には、堂々と、主張する外交を推進していただきたいと思います。
 今、我が国外交の最大の課題が北朝鮮問題であることは衆目の一致するところであり、拉致、核、ミサイル問題の全面的な解決が一日も早く待たれます。
 拉致問題は、世界的異常事件の一つであります。我が国は北朝鮮に対し対話と圧力で臨むことが基本方針でありますが、北朝鮮は対話をみずから閉ざしているため、我が国は諸外国とともに圧力をかけていかなければなりません。
 長い間、家族の方々や関係者は、大変な御労苦を強いられ、高齢化し、疲れ切っておられます。もはや、家族や関係者だけの問題ではありません。政府は、我が国の最重要政策の一つとして認識し、国の威信をかけて取り組んでいくべきです。総理も、各国首脳との会談の際には、必ずこのことに言及し、拉致家族もその対応を高く評価しておられます。私も、党の拉致問題対策特命委員長として今後とも全力を傾注していく覚悟でありますが、改めて総理の御決意をお聞かせください。
 本年一月九日、念願の防衛省への移行が実現いたしました。また、自衛隊の国際平和協力業務が本来任務となりました。これは、日本の防衛政策と世界の平和と安定を考える上で、極めて意義深いものであります。
 ところで、日本の防衛は、自衛隊の防衛力と日米安保体制が一体となって我が国の安全を確保し、アジアと世界の平和と安定のために貢献していく態勢となっております。集団的自衛権やミサイル防衛など、真の日米同盟関係を今こそ確立すべきであります。そのため、米軍再編問題の処理を急ぎ、日米間の情報共有、対話、共同行動など、同盟関係の一層の深化が必要であると考えます。
 中国の宇宙での軍事活動は、一般生活の情報通信への影響も懸念され、また、東シナ海の海洋軍事行動などの拡張政策も含め、不透明性が拡大し、脅威が増しております。
 総理は、こうした国際情勢の変化に有効、迅速な対応をするため、日本版NSCをつくって、外交・安保政策を官邸主導で行おうと考えていますが、この種の組織につきまとう縦割り行政と情報収集体系の問題をいかにさばくかが問題であります。
 これらの諸問題は、安倍総理のリーダーシップの発揮いかんにかかっています。防衛政策についての総理のお考えをお聞かせください。
 イラクの安定は、日本の国益にとっても極めて重要であり、中東地域が混乱すれば、エネルギー問題等、世界はもとより、日本にも大きな影響が及びます。我々は、国際社会と協力して、イラクの安定のために、今後もイラク特措法を延長してでも、現在行っている日本のイラクへの人道復興支援活動は継続していくべきと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。
 さきの臨時国会におきまして、積年の課題であった、新しい時代にふさわしい教育基本法の改正が実現いたしました。これは、極めて大きな教育改革の第一歩であったと思います。改正教育基本法に示された理念のもと、今後、具体的な改革を進めていくことは、国の将来を決める最重要課題であります。
 また、世界で頑張っている日本人に対し、各国、とりわけ途上国の皆さん方は大きな期待と信頼を寄せております。教育改革を推し進めることは、本人の目標達成や日本の活力ある国づくりに必要なだけでなく、世界へのさまざまな貢献のためにも、教育改革を断固としてなし遂げ、日本人力を高める必要があります。
 折しも、教育再生会議から第一次報告が提出され、授業時間増による子供の学力向上、教員免許更新制や不適格教員対策、学校の責任体制の確立による信頼回復、社会総がかりでの教育再生、さらには教育委員会の改革も含め提言されたところでありますが、頑張る教員を評価、支援する方策も含めまして、教育改革に対する総理の御決意をお尋ね申し上げます。
 教育とは、学力、体力、徳力を高め、主体的に国家及び社会の形成者としての資質を養い、社会の規律を学ぶことであります。子供の学力や体力は低下し、また、いじめにまつわる自殺などの悲惨な事件が続いております。いじめ問題への対応は喫緊の課題であり、社会全体の責任として、子供たちをいじめから守り通すために全力を尽くす必要があります。
 その一方には、教職員組合などが関係した不適切な教育現場の実態があります。
 北海道教育委員会が行ったいじめ実態調査をめぐって、北海道教組が各支部に対してこの調査に協力しないよう指示文書を出していたという報道がありました。学校現場において、上司である校長の命令に部下である教員が従わないことは、明らかに公務員法違反であります。
 また、私の地元帯広市におきましては、子供たちのいじめを防止させるべき教師が、組合に加入していない教師とは口をきかないなど、教師間の陰湿ないじめを行っている実態もあると聞いております。
 入学式や卒業式の国旗掲揚、国歌斉唱を妨害するような一部の教職員の行動は、法令違反であり、社会的通念を逸脱しております。
 先日、文部科学省から公表された学校給食の未納状況に関する調査によれば、学校給食を受けている約一千万人の児童生徒のうち約十万人もが未納状態であります。経済的に負担が困難である保護者については、生活保護のほか、就学援助制度も利用できます。ところが、未納の約六割は、経済的な理由ではなく、保護者の責任感や規範意識の欠如に原因があるとされております。
 学校で起きているこうした事態について、総理はどのようにお考えか、御所見をお聞かせください。
 次に、公務員制度改革についてお尋ねをいたしますが、その前に、政治と政治資金をめぐる問題につきましては、国民からの政治に対する不信感を一刻も早く払拭し、政治の信頼回復のため、事務所費の透明化のあり方につきましても、党としても現在真剣に検討を進めているところであります。
 もとより公務員は、国や地方の行政を遂行するための責任と誇りを持つことが前提で、その制度は、時代の流れや科学技術の進展等に伴い変化する国民のニーズに十分対応でき、かつ簡素である必要があります。また、公務員の不作為をなくし、活気とやる気がみなぎる職場環境の整備も重要な観点であると考えます。
 新たな公務員制度の考え方は、第一に、頑張った者が報われる能力・実績主義の導入、第二に、天下りを排除する人事・給与構造の再構築と再就職管理の適正化、第三に、人口減少社会に入って有能な人材を有効に活用するための官民の人材交流という三本柱に集約されると考えます。
 公務員の労働基本権については、それを付与することにより、公務員としての責任と誇りの醸成に資するという考え方もありますが、政府専門調査会での結論はいつまでに出るのでしょうか。さらに、仮に公務員に労働基本権を付与する場合、身分保障や分限処分との関係はどうなるのか、総理のお考えをお聞かせください。
 次に、一月二十五日に閣議決定されました「日本経済の進路と戦略」に沿った個別具体的な政策についてお伺いいたします。
 我が国の財政状況は、国、地方を合わせた債務残高が平成十八年度末で約七百六十兆円、しかも、なお増加いたします。真の財政再建は、将来世代に責任を持ち、先進国で最大の対GDP比債務残高を安定的に引き下げることであり、二〇一一年度の国、地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化は、単なる一里塚にすぎません。
 我が国の経済財政運営は、成長なくして財政再建なしを基本理念として堅持しています。景気回復の足取りは遅く、都市と地方の間、企業規模等によるばらつきや賃金の伸び悩みによる家計消費の低迷など、依然としてデフレ脱却に向けての懸念材料が存在し、今回、日銀が利上げを見送るという適切な判断をしたのも、このことによります。我々は、経済成長と財政健全化を車の両輪とした総合的な施策に取り組む決意を改めて確認すべきであります。
 「日本経済の進路と戦略」は、まさに、これまでの改革努力の上に未来への明るい展望を示そうとするものであります。まず、好調な企業部門に支えられた景気が中小企業、家計へと波及し、消費者が真に景気を実感できるようにするためのスケジュールについて、総理のお考えをお伺いいたします。
 「日本経済の進路と戦略」において、我が国が目指すものは創造と成長の実現であるとの方向性を示しております。
 その成長の潜在力を引き出す手段としてイノベーションが必要でありますが、それは、単なる技術革新ではなく、創造的破壊により、独創的な考え方や独創的な技術を要素に、経済的、社会的に大きな変化を起こし、新たな価値を生み出すことであります。
 総理の描くイノベーションに基づく新成長経済の姿について、具体的なイメージをお聞かせください。
 我が国は、エネルギー、環境保全、エンバイロンメント、経済成長、エコノミーの三つのEを同時に実現していくことが必要であります。
 このために最も必要なのは、省エネであります。日本の最先端の省エネ技術を活用して、アジア地域のエネルギー需要の急増に歯どめをかけるとともに、世界のエネルギー安全保障や地球環境問題の解決にも寄与することができます。
 また、我が国は、安全性を前提に、一貫して原子力発電の推進を図ってまいりましたが、二酸化炭素を排出しない原子力発電は、今や、世界各国において再評価されるようになりました。
 さらに、バイオマスの利用、活用も重要になってまいりました。
 ことしから、北海道十勝等で本格的なバイオの実証実験が開始されますが、バイオ重視の世界の流れの中で、資源のない日本がバイオに力を入れるのは当然のことであります。
 また、バイオマスの一層の利活用は、農林水産業の新たな領域を開拓するものであり、農林水産業、農山漁村の活性化や国土、農地の保全の観点からも重要であります。このため、税制や補助金など多方面にわたる支援策の検討が必要であります。
 先般、総理は、国産バイオ燃料を現在のガソリン消費量の一割程度、六百万キロリットルまで生産拡大するため政府全体で検討するよう指示されたと伺っております。
 エネルギー総合戦略にどのように取り組んでいくのか、総理にお尋ねいたします。
 経済連携協定、EPAは、経済のグローバル化が進み、WTOを中心とする多角的自由貿易体制を補完する二国間協定として、経済連携を中心とした二国間の関係強化に寄与するものとして推進しています。
 政府は、今後二年間でEPA締結相手国等が少なくとも十二以上になることを目指していますが、特に豪州につきましては、主要な農産物の関税を撤廃すれば国内農業、地域経済、さらには消費者にも与える影響が極めて大きいこと、WTO交渉との関係、豪州以外の国との関係などに対し十分な配慮のもと、交渉に入ることにいたしました。
 また、一月十四日に、日中韓三国投資協定交渉の開始について合意されております。さらには、スイス、湾岸諸国といった国々との交渉開始が決定されました。
 これらEPAをめぐる我が国の戦略について、総理のお考えをお伺いいたします。
 次に、地域活性化に関する政府の取り組みについてお尋ねいたします。
 昨今、財政や経済の悪化に苦しむ地域は少なくありません。内閣には、地域経済の好転を目指す新たな地域活性化策を国政の最重要課題として実施していただきたいと思います。
 政府には、こうした地域の厳しい現状に目配りしながら、地域の実情に沿って中小企業、大学、自治体等が一体となった自発的な取り組みに対し、国は全力を挙げて支援するので、地域の側もぜひ頑張ってもらいたいというメッセージを、できるだけ早く全国各地域に伝えていただきたいと思います。
 そこで、今国会で審議予定の法案や予算案として具体的にどういったものが用意されているのか、中小企業への思いも含めまして、地域活性化に向けた総合的な施策の展開について、総理にお伺いいたします。
 我が国は、世界じゅうから食料を大量に輸入し、豊かな食生活を享受してまいりました。一方で、我が国のカロリーベースの食料自給率は約四〇%で、先進国中最低の水準であります。
 また、我が国は世界最大の農産物純輸入国でありますが、これは、農産物という形で間接的に水資源を輸入していることでもあります。これらの農産物をつくるのに必要な水を仮想水と呼びますけれども、我が国は仮想水換算で六百四十億トンもの膨大な量を輸入していることになります。世界では、農業用水を初めとする過剰取水による自然環境、生態系への影響も指摘されております。このような状況を考えれば、地球全体の環境保全の観点からも、農産物自給率向上に一層努力すべきと考えます。
 本年四月から、一連の農政改革が実施に移されます。とりわけ新たな経営安定対策は、意欲と能力のある担い手を確保し、従事者の減少、高齢化が進展する国内農業の体質強化を図るためのかぎとなる施策であります。この対策の導入を契機に、経営感覚にすぐれた担い手の育成を加速化すべきと考えます。
 民主党は一見耳ざわりのよい農業政策を主張しておりますが、その内容にはさまざまな問題があります。
 すべての農家を対象にし、現在の農林水産予算の中から約一兆円もの税金を投入して所得補償を導入すると言っていますが、これは単なるばらまき政策で、従事者の減少、高齢化の進行など脆弱な農業構造は改善されず、将来の世代がやる気を起こすような体質の強い農業はつくれません。
 また、食料の完全自給を達成するとも主張しております。食料自給率の向上は重要な課題でありますが、完全自給となりますと、我が国の農地の二倍以上もの農地が新たに必要になってくるなど、全く非現実的であります。さらに、農産物自由化の促進も主張しております。
 我が国農業の構造改革が待ったなしの今、政府としては、民主党のような非現実的な政策ではなく、実効性のある現実的な農政を推進し、国民の信頼と支持を得ることが必要不可欠であります。このためにも、今後の農業、農村のビジョンを国民にわかりやすく示し、農政の推進に当たるべきと考えますが、総理のお考えをお尋ねいたします。
 次に、農林水産物の輸出促進策についてお尋ねします。
 日本食が世界じゅうで一大ブームになっており、また、中国を初めとするアジア諸国においては、安全で、おいしく、味も一級品であるリンゴやナシ等が大変よく売れております。さらに、今後、中国向けの米輸出も期待されます。
 こうしたチャンスをとらえ、みずからが生産したものをみずからの戦略をもって輸出し、海外の消費者から評価を得て販売することは、我が国農林水産業の活性化に大きく貢献するものであります。既に、私の地元北海道十勝では、長芋を東アジア各地に輸出し、高い評価を受けるとともに、販売価格を安定させ、農家経営の安定へとつなげています。
 総理は、施政方針演説におきまして、農林水産物、食品の輸出額を二〇一三年までに現行の三倍の一兆円規模とすることを目指すというお考えを表明されましたが、さらなる輸出の拡大目標に向けてどのように取り組まれるのか、お聞かせください。
 また、森林・林業については、木材の自給率が最近少し上昇しておりますけれども、環境対策を初め、国民生活の中に木を取り入れることが、緑を豊かにし、総理の掲げている美しい日本につながってまいります。そうした観点から、地球温暖化防止を含め、国土の三分の二を占める森林整備の加速化に向けた取り組み方針を総理にお伺いいたします。
 さらに、国内水産業にあっては、資源状況が悪化する一方、漁業者の減少など脆弱化が懸念され、消費者も水産物の安定的確保に不安を抱いております。排他的経済水域は海洋体積世界第四位の日本のこの立場を十分活用し、我が国水産業の思い切った政策体系を見直すべきと考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
 経済社会を安定的に支える税制に向けて、昨年末に与党税制改正大綱を取りまとめました。十九年度改正におきましては、具体的には、我が国経済を強化すべく、減価償却制度の抜本的見直しや中小企業の留保金課税の撤廃、地域産業活性化支援税制の創設等を行いました。また、寄附金税制を充実させたほか、住宅関係等も含め国民生活に配慮する税制措置を講じました。
 我が国財政は危機的状況にあり、将来にわたる一般会計の徹底した歳出削減や特別会計改革による約二十兆円の財政寄与及び経済成長による自然増収だけでは応じ切れない財政需要については税制改革により対応し、税制は、基礎的財政収支の黒字化だけではなく、将来増加が見込まれる社会保障費等も踏まえ、債務残高を引き下げ得る体質を備えなければなりません。その上で、本年秋以降、早期に、本格的かつ具体的な議論を行い、平成十九年度をめどに、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組んでいくことも大綱に明記されました。
 平成十九年度税制改正の基本的考え方及び今後の税制改正について、総理のお考えをお伺いいたします。
 道路特定財源につきましては、小泉政権以来の改革の最重要課題の一つであり、安倍政権におきましても、総理のリーダーシップのもと、与党・政府において具体策の取りまとめに至ったところであります。
 今回の具体策は、制度創設以来、約五十年にわたり変わることのなかった道路特定財源制度の歴史的大改革であり、今後とも、国や地方、納税者のことを十分に踏まえて取り組んでいただきたいと考えます。
 揮発油税は、総理が生まれた昭和二十九年に初めて議員立法により、昭和四十一年には石油ガス税が法律改正により、さらに、昭和四十六年には自動車重量税が中川一郎大蔵政務次官の政府答弁により、それぞれ道路特定財源とされました。
 そこで、改めて、今回、「道路特定財源の見直しに関する具体策」を実現するに当たっての総理の決意をお伺いいたします。
 公的年金制度については、年金改正で構築された仕組みのもと、国民皆年金の理念を堅持し、少子高齢化にも対応できる揺るぎないものとしていくことが必要であります。また、官民の公平性を確保し、より安定した制度とするための厚生年金と共済年金の被用者年金一元化などの重要課題も山積しております。これらの諸課題について、総理の所見をお伺いいたします。
 民主党の年金改革案は、混迷を深めております。これまで、民主党は、基礎年金の全額税方式、年金目的消費税(三%)の導入を声高に主張してまいりましたが、先日発表された案では、年金目的消費税の導入はどこかに行ってしまいました。みずからの提案の根幹に、さしたる説明も全くありません。
 しかも、基礎年金を全額税方式にするためには、平成二十一年度ベースで約十六兆円もの巨額の税金が新たに必要となりますが、この巨額の財源をどう手当てするのでしょうか。民主党は、消費税率は現行を維持と繰り返すばかりであります。
 社会保険庁改革は、与党が責任を持って進めてまいりましたが、自治労国費評議会職員のたび重なる不祥事を踏まえ、さらなる検討を加え、昨年末に改革方針をまとめました。
 公的年金の運営体制を再構築し、国民の信頼を回復するため、社会保険庁は廃止・解体六分割いたします。そして、必要最小限の管理部門のみ国に置き、運営業務を非公務員型の新法人に行わせます。さらに、一般的な保険料徴収を初め、民間にできる業務は積極的に民間委託することにし、組織人員を最小限にし、一層の合理化、効率化を図ります。新たな運営体制が発足した後、その状況の推移を見ながら、新法人のあり方、存続の可否も含め、三年をめどとして引き続き抜本的な検討を行います。
 そこで、社会保険庁改革に向けた総理の御決意を改めてお伺いいたします。
 次に、少子化対策についてお伺いいたします。
 我が国の合計特殊出生率は低下の一途をたどっており、平成十七年は一・二六と国際的に最も低い水準となっていますが、多くの国民は、結婚したい、子供は二人以上持ちたいと考えており、それがすべてかなうと仮定すれば、出生率は最大一・七五程度になるという試算もあります。人口減少にいたずらにひるむ必要はなく、これに対抗していくことが必要であります。
 総理は、就任時に、子育てフレンドリーな社会づくりを掲げ、また、施政方針演説では、まさに、少子化に対し、さらに本格的な戦略を打ち立てることを表明されております。今後の少子化対策をどのように進めていくのか、総理の具体的なお考えをお伺いいたします。
 総理は、施政方針演説の中で、パートタイム労働法の改正を明言されました。パートタイム労働者であっても、働きに応じた公正な待遇を受けるとともに、正規雇用への転換が促進されることは、安倍内閣が推進する、チャンスにあふれ、何度でもチャレンジが可能な社会の構築のために重要なことと考えます。パートタイム労働者の正社員との均衡待遇、正規雇用への転換の促進に向けた取り組みを強化すべきであります。
 若者の雇用情勢については、景気の回復や政府の積極的な取り組みにより、全体として改善傾向にあります。特に、大学生の就職状況はバブル期に匹敵する売り手市場になっていると言われております。
 しかし、九〇年代の経済が低迷している時期に学校を卒業した若者たちは、企業の採用抑制の中で、希望しながらも正社員になれず、やむを得ずフリーターとなり、そのまま年長化している人も多いと考えます。就職活動が成功するかどうかは、本人の能力や意欲に加えて、その時期の景気の動向、企業の採用意欲等に大きく影響されるものであり、卒業する時期による運、不運があることは否定できませんが、そのまま不本意に人生を過ごしていくようなことがあってはならないと考えます。
 これら雇用をめぐる問題にどのように取り組むのか、総理のお考えをお伺いいたします。
 終わりに、総理の施政方針演説を振り返ると、意欲、価値観、個性、能力、自律といった言葉が多く使われております。これは、総理が国民を信頼し、期待して国の発展を目指そうとしているからだと私は理解しております。
 フランスの細菌学者、ルイ・パスツールは、チャンスは準備している人に訪れると言っておりますけれども、私たちは、国民がだれでも目標を設定し、挑戦すれば目標達成できる社会を目指します。そして、仮に達成できなければ、セーフティーネットが機能し、そして、だれもが何度でも再挑戦していける社会を目指します。同時に、社会経済システムを改革することにより格差は是正され、活力ある日本になることを確信いたします。
 アインシュタインが称賛した日本人の謙虚、質素などの美徳を保ちつつ、誇りと自信を持った国民によって、見える部分、見えない心の部分もともに真に「美しい国、日本」が実現されるよう、私たちは安倍総理を先頭に全力を挙げて努力することをお誓いして、質問を終わります。